検索窓
今日:11 hit、昨日:0 hit、合計:11,690 hit

第3話 ページ4

「バレたのが御山さんでよかった。」
そう言って彼は笑う。
「皆さんには本当に言わないんですか?」
「言わないよ、言ったらきっと皆変になるから。」
死ぬ予定じゃなかったから、仲間を沢山作っちゃったのが失敗だったなと言って頭を掻く。
私は彼を黙って見つめていた。
「協力してくれない?隠し通すのと俺の残りの人生。」
その言葉に頷いた。彼は嬉しそうにありがとうと言うだけだった。
仮眠室から出ると皆が心配そうに私達を見つめた。彼は簡単に嘘をついた。
皆彼の言葉を信じた。彼は笑っていた。
私は荷物を持ってオフィスを出た。冷たい風が頬を撫でてそういえば秋だったと思い出した。
家に帰って彼の病を調べると”不治の病”とどんな本にも書いてあった。
その日夢を見た。
私が今まで見てきた光景だった。
子供の頃、学校で飼っていたうさぎが死んだ。皆泣いていた。私は涙なんて出てこなかった。
人が死んだ。遺族が泣いていた。それを隣で見つめることしか出来なかった。悲しみが分からないから慰めることも出来なかった。
私は子供の時、悲しみを忘れた。
今思えば泣いたことがなかった。
何度も見た。生物が死んだところを。
折れた蝶の羽が落ちていた。
人に踏まれたのであろうコガネムシがもがき苦しんでいた。
夏の終わり、蝉が転がっていた。
私達は肉を食べた。魚を食べた。
簡単に生物を殺した。
なのに同じ種族が死ぬと私達は泣いた。
何故か分からなかった。
そんなの平等じゃないと思った。悟った。
それから私は涙を流さなかった。
私は理解するのが早すぎた。
この世界の残酷さを、美しさを。
生きていくためには誰かが死ぬしかないと、この世界に限界があると、終わりがあると、永遠なんてないと気がついた。当たり前のことに私は目を瞑っていた。
それに、小学生で気が付いた。
目が覚めると外は明るかった。眩しかった。
いつか死ぬと悟った頃から私は友達を仲間を作らなくなった。
朝日に照らされ眩しいと思うのが当たり前じゃないと気がついた頃から私は写真を撮るようになった。
人にはその写真は当たり前を撮ったものに見えた。私という名の人外にはその写真は美しく見えた。
人は私を変だと言った。私は人を変だと言った。何も分からなかった。
彼の死を聞いても悲しくなかった。
それが私にとって正しかった。
今日も私は当たり前じゃない日々を過ごす。

第4話→←第2話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (7 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
16人がお気に入り
設定タグ:ノックイズ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

けろすけ(プロフ) - ありがとうございます!!嬉しいです!これからもマジで頑張ります! (2020年4月23日 11時) (レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
hina(プロフ) - コメント失礼します。いっつも楽しみにしてます。描写がめちゃめちゃ好きで読んでると思わず「儚ねぇ,,,」ってなります。応援してます!これからも頑張ってください! (2020年4月23日 1時) (レス) id: eee79864a1 (このIDを非表示/違反報告)
けろすけ(プロフ) - すずどらさん» コメントありがとうございます!!良かったです!!勢いで投稿しているので、消したり作り直したり沢山すると思いますが完結できるように頑張ります! (2020年4月21日 15時) (レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 初コメ失礼します。良いですね、涙腺が緩みっぱなしです。izwさんと夢主ちゃんの暖かい風景に隠れた切ない秘密がぐっと来ます。izwさんがいなくなったらメンバーは号泣しそうだな、なんて妄想しています。勝手に語ってすいません。これからも頑張って下さい。 (2020年4月21日 11時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:けろすけ | 作成日時:2020年3月20日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。