第25話 ページ26
驚いて声も出ない。
私の目の前の柱に手を付く彼は暗くてよく見えない。後ろに下がろうとするが、後ろは彼が手を着いている柱。彼の首から下がるネックレスが怪しくキラリと光った。
ぐっと引き寄せられて抱きしめられる。
抵抗するにも力が強い。驚きすぎて声も出ない。彼が私の肩に顔を埋める。息が止まりそうだった。
「…………こうされたらどう思う？」
耳元で彼が囁く。平然を装い声を発そうとすると、またぐっと力を強められる。
「どうも何も、抵抗してないじゃないですか。」
曖昧な返答をすると彼からの返事が来なくて焦る。急になんなんだ。
「……………………ちゃんと言ってよ。」
そう言って手の位置を変えるので反射的に手から逃げる。
「嫌なの？」
いつもと違う彼に思考が停止してしまっているのか、返答が見当たらない。なんで急に、なんで。
何か言わないといけないと思い、自分の正直な気持ちを口にする。
「嫌では、ないですけど……」
私の言葉を聞いて少ししてから彼がはぁっと息を吐く。
「突っぱねてくれた方が良かったのに。」
体を離しながらそんなことを言うので彼を見上げることしか出来ない。何を考えているのか全く分からない。
彼が背を向け私から離れていく。その背中が寂しそうで思わず手を伸ばした。
彼の手を取ると驚いて振り返る。その顔はやはり寂しそうで自分から彼を抱きしめた。
「どういうつもりなのか正直に言ってください。」
彼は黙ったまま、一向に口を開こうとしない。
「ねぇ。」
少し強めの口調で言ってしまって後悔する。彼だって結構参ってるんだ。
「…寂しいんだよ。誰かに触れてないと自分が消えちゃうんじゃないかって怖くなる。俺だって怖いんだよ……」
そう言って縋り付くように私をまた強く抱きしめる彼にどうしようもない罪悪感が襲ってくる。
「……御山さん巻き込んじゃって、本当は後悔してる。ごめん本当に。……今日嫌ってくれたらそれでいいと、思ってた。」
彼の本音を聞いて、少し寂しいと感じた。彼の秘密を知ってから私は変わってしまった。でもそれを後悔していない。彼に頼られることがこんなにも嬉しい事なんだということが彼に伝わっていないことがすごく悔しい。
「私は後悔していません。」
「最後までずっと傍に居たいです。」
告白のような台詞になってしまったが、彼に伝わっただろうか。それは言葉足らずの私の精一杯の思いだった。
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けろすけ(プロフ) - ありがとうございます!!嬉しいです！これからもマジで頑張ります！ (2020年4月23日 11時) (
レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
hina(プロフ) - コメント失礼します。いっつも楽しみにしてます。描写がめちゃめちゃ好きで読んでると思わず「儚ねぇ,,,」ってなります。応援してます！これからも頑張ってください！ (2020年4月23日 1時) (レス) id: eee79864a1 (このIDを非表示/違反報告)
けろすけ(プロフ) - すずどらさん» コメントありがとうございます!!良かったです!!勢いで投稿しているので、消したり作り直したり沢山すると思いますが完結できるように頑張ります！ (2020年4月21日 15時) (レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 初コメ失礼します。良いですね、涙腺が緩みっぱなしです。izwさんと夢主ちゃんの暖かい風景に隠れた切ない秘密がぐっと来ます。izwさんがいなくなったらメンバーは号泣しそうだな、なんて妄想しています。勝手に語ってすいません。これからも頑張って下さい。 (2020年4月21日 11時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：けろすけ | 作成日時：2020年3月20日 13時
