第23話 ページ24
日曜日
私はまたいつもの場所で彼を待っていた。
少し早めに来すぎてまだ約束の10分前、暇なので予習程度に『1年後の約束』を読む。
読むスピードが早いのか彼が遅いのかもう半分くらいまで読んでしまった。
ふと、腕時計に目を移すと約束の時間になっていた。またページをめくる。
隣に人影が現れて顔を上げると彼が居た。
「声、かけて良かったですよ。」
「真剣だったから。」
また明るい笑顔を見せる。その笑顔から逃げるように歩き出すと彼も駆け足で着いてきて隣を歩く。
映画館までは少し遠いけれど沈黙も苦痛ではない。それに彼は楽しそうに話を続ける。
彼に向かって声を発そうとしたその時
ドサッ
目の前で人が倒れた。勿論彼じゃない。
咄嗟に倒れた人に駆け寄る。声をかけても返事がない。息と脈を確認する。
声をかけ続けるが一向に返事は返って来ない。
「誰かお医者様はいらっしゃいませんか？」
道の真ん中で辺りを見回すと一人の男性が駆け寄ってきた。私の病院の先生だった。
「御山さん、ありがとね」
そう言ってから心臓マッサージを始める。
その間に私は救急車を呼んだ。
救急車が到着して患者さんを乗せていく。角を曲がって見えなくなってから、ほっと胸を撫で下ろした。
ハッとして彼の方を向くと彼はなんとも言えない表情をしていた。
目の前で人が倒れて、自分だってそうなる可能性があるのだから怖くなって当たり前だろう。
その場から逃げるように彼の手を取って駆け出した。
「凄いや」
信号で止まった時彼が言葉を発した。驚いて振り返ると彼はいつもの笑顔で笑っている。
「なんか御山さんのこと遠くに感じちゃった。ごめん。」
助ける側と助けられる側。そんな壁ができてしまったように感じて言葉が出ない。何をいえば彼に届くのか分からない。
「行きましょう」
静かにそう言うしかなかった。
飲み物だけ買って席に着くともうすぐ始まるという合図で辺が暗くなる。
映画も終盤に差し掛かり周りの人から鼻をすする音が聞こえる。持ち私と彼は泣いていない。約束だから。
エンドロールになると周りの人達も立ち上がり目頭や鼻を押さえながらシアターを出ていく。私達もそれに便乗して、シアターを出た。
「原作と少し違うんだよね。」
「私は原作の方が好きかもしれません。」
そんな会話をしながら映画館を出る。
原作では亡くなった彼が映画では生き残った。
彼に似た主人公が生き残るのは私にとって少しだけ複雑だった。
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けろすけ(プロフ) - ありがとうございます!!嬉しいです！これからもマジで頑張ります！ (2020年4月23日 11時) (
レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
hina(プロフ) - コメント失礼します。いっつも楽しみにしてます。描写がめちゃめちゃ好きで読んでると思わず「儚ねぇ,,,」ってなります。応援してます！これからも頑張ってください！ (2020年4月23日 1時) (レス) id: eee79864a1 (このIDを非表示/違反報告)
けろすけ(プロフ) - すずどらさん» コメントありがとうございます!!良かったです!!勢いで投稿しているので、消したり作り直したり沢山すると思いますが完結できるように頑張ります！ (2020年4月21日 15時) (レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 初コメ失礼します。良いですね、涙腺が緩みっぱなしです。izwさんと夢主ちゃんの暖かい風景に隠れた切ない秘密がぐっと来ます。izwさんがいなくなったらメンバーは号泣しそうだな、なんて妄想しています。勝手に語ってすいません。これからも頑張って下さい。 (2020年4月21日 11時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：けろすけ | 作成日時：2020年3月20日 13時
