第2話 ページ3
今日から○○大学病院に務めることになったので少しだけ早く出勤した。
前の病院とは比べ物にならないくらい大きな大学病院に息を飲む。
看護師達もキビキビとした人達ばかりで阪原先輩を思い出した。
仕事にはすぐに慣れ、1週間で周りの先輩達と同じように働けるようになった。
1ヶ月が経った頃には私に後輩ができた。
○○大学病院に移ってから2ヶ月程が経った頃、私は患者さんのカルテを整理していた。
「え」
思わず声が漏れた。思ってもいない名前がそこにあったから。あるはずのない名前をじっと見つめていた。
”伊沢拓司”
間違いなくそう書いてあった。
私の思考は完全に停止し、ある考えが頭をよぎった。この病院に風邪だとかそんなヤワなもので受診するはずがなかった。名前の無い感情が私の中にあった。
私は家に帰る前にオフィスに向かった。
看護師である私を気遣って、週に１回オフィスに来ればいいと言ってくれた。その日は来るべき日では無い。
「あれ御山さん今日は...」
驚いた様子で福良さんが言うが私の耳には入らなかった。今すぐ確認したかった。
「伊沢さんちょっといいですか？」
声が震えているのが自分でもわかった。
仮眠室に入り鍵をかける伊沢さんに背を向けたまま私は口を開いた。
「伊沢さん何か隠してますか？」
顔を見たくなかった。見れなかった。
背を向けたまま彼の返答を待った。
「……何も」
少し間を開けてそう言った。嘘だ。掌を握りしめる。跡がつくほど私はこの感情が自分でもわかっていなかった。怒りなのか悲しみなのか、感情を抑え込むのに必死だった。
「見ました。カルテ」
その言葉を聞いた時伊沢さんは目を逸らした。そんな気がした。気まずい雰囲気が流れ唇を噛む。その時自分は彼が嘘をついていることに怒っているのだと気がついた。悲しみなんてなかった。
「そっか、バレちゃったならしょうがないや」
こっち向いてよと彼は言う。ゆっくりと振り返った。怒っているのは隠せなかった。
「俺、もうすぐ死ぬんだ。」
はっきりとそう言われて何も感じなかった。さっきまで感じていた怒りも言葉を聞いて消えていった。
彼は摘出不可能なところに腫瘍が出来、余命1年と宣告されたらしい。定期的に病院に通っていて今までずっと隠してきたと言っていた。
あと、ちょうど１年後に彼は死ぬ。
死なんて何度も経験してきた。だからなのか私は何も感じられなかった。
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けろすけ(プロフ) - ありがとうございます!!嬉しいです！これからもマジで頑張ります！ (2020年4月23日 11時) (
レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
hina(プロフ) - コメント失礼します。いっつも楽しみにしてます。描写がめちゃめちゃ好きで読んでると思わず「儚ねぇ,,,」ってなります。応援してます！これからも頑張ってください！ (2020年4月23日 1時) (レス) id: eee79864a1 (このIDを非表示/違反報告)
けろすけ(プロフ) - すずどらさん» コメントありがとうございます!!良かったです!!勢いで投稿しているので、消したり作り直したり沢山すると思いますが完結できるように頑張ります！ (2020年4月21日 15時) (レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 初コメ失礼します。良いですね、涙腺が緩みっぱなしです。izwさんと夢主ちゃんの暖かい風景に隠れた切ない秘密がぐっと来ます。izwさんがいなくなったらメンバーは号泣しそうだな、なんて妄想しています。勝手に語ってすいません。これからも頑張って下さい。 (2020年4月21日 11時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：けろすけ | 作成日時：2020年3月20日 13時
