第19話 ページ20
急に彼が顔を顰める。
何事かと思い、寝たフリのまま彼を見つめる。
眉間を押えて目を伏せる。俯いてため息を吐いた。
肩が震えている。
急に荒くなりだした彼の呼吸。それを抑えるように自分の方を肩抱きしめる形で彼は蹲る。
鞄を漁って薬を取り出す。それを無理矢理お茶で流し込み目を瞑る。
目を軽く擦ったと思ったら彼の目から涙が零れた。
目を逸らした。寝返りをうった振りをして彼の方から顔を逸らす。窓の外は真っ暗で彼が反射して見えてしまった。
声を殺して涙を流す。とめどなく溢れるそれを止めようと必死に拭う。
彼は約束を破った。
でも私は何故か怒っていなかった。
見たくなくて目を閉じた。
もうすぐ東京だと言うところで私は目を開けた。閉じていたため世界が眩しい。
隣の彼はもう泣いてない。何事も無かったかのように私に笑いかける。
「今度はさ、映画でも行こうよ。1年後の約束映画化するらしいし。」
「そうなんですか。いいですよ」
「じゃあまた連絡するから。」
そう言って彼は手を振る。彼はいつだって無邪気に振舞う。それを見ていると、だんだん忘れていく。彼が死ぬこと。
死ぬなんて嘘のように見えるが今日の涙は本物だ。
彼も怖いんだろうか。
病院で見かける患者さんの涙。その涙より彼の涙が綺麗だと思った。窓に映る自分は酷く醜いと思った。
堪えるように、抑えるように彼は涙を拭った。
彼はそれでも笑っていた。
旅行に行ってから何日か経って、私はオフィスに来ていた。
編集作業をする。向こうでは皆が動画を撮影している。編集部の皆は黙って真剣に記事や動画を編集していた。
イヤホンをつけて動画を再生する。彼の笑顔が目に入った。全くいつもと変わらない彼。でも私の前の彼とは少し違った。
その時部屋から彼らが出てきた。楽しそうに話しながら。
「俺が居なくなってもいいのかよォ！」
彼の言葉に反応する私がいた。
「別にいいっすよw」
軽々しく言った誰かの言葉に無性にイラついた。
勢いよく立ち上がり外に出る。顔が熱い。
螺旋階段に腰かける。冷たい階段が私の熱さをかき消した。
頭を抱えた。
なんで彼がそんなこと言ったのか。どうせ泣くくせに別にいいなんて言ったのか。死ぬってどういうことか本当に分かっているのか。
彼の涙が頭をよぎる。
ふざけんな。なんで、本当に死ぬのに。
烏が電線の上で気持ち悪い鳴き声を上げていた。
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けろすけ(プロフ) - ありがとうございます!!嬉しいです！これからもマジで頑張ります！ (2020年4月23日 11時) (
レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
hina(プロフ) - コメント失礼します。いっつも楽しみにしてます。描写がめちゃめちゃ好きで読んでると思わず「儚ねぇ,,,」ってなります。応援してます！これからも頑張ってください！ (2020年4月23日 1時) (レス) id: eee79864a1 (このIDを非表示/違反報告)
けろすけ(プロフ) - すずどらさん» コメントありがとうございます!!良かったです!!勢いで投稿しているので、消したり作り直したり沢山すると思いますが完結できるように頑張ります！ (2020年4月21日 15時) (レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 初コメ失礼します。良いですね、涙腺が緩みっぱなしです。izwさんと夢主ちゃんの暖かい風景に隠れた切ない秘密がぐっと来ます。izwさんがいなくなったらメンバーは号泣しそうだな、なんて妄想しています。勝手に語ってすいません。これからも頑張って下さい。 (2020年4月21日 11時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：けろすけ | 作成日時：2020年3月20日 13時
