第13話 ページ14
「……はぁ？」
自分でも驚くような呆れた声が出て咄嗟に口を塞ぐ。その反応を見て彼はニコニコと笑っていた。
「冗談だよ。御山さんこういうの慣れてない？」
「人と関わらないし、マジトーンで言うのやめてください。」
「今までずっと嘘ついてきたんだから得意だよ。」
「……残念な特技ですね。」
私の冷たい言葉にも彼は楽しそうに答える。
新幹線の中の時間の流れは少しだけ遅いような気がする。彼とはたまに会話(？)をするが、殆どはお互いにスマホを弄るなどして過ごしていた。
時間の流れが遅いと言ったが、いつの間にか目的地に着いていた。結構な時間ボーッとしていたかもしれない。
新幹線を降りると東京とはまた違う雰囲気に飲まれ、当たりを見回した。
派手派手しくない街並みに胸がざわつく。旅行なんて何年ぶりだろうか。
「やっぱ、秋に来るべきだよなぁ」
眩しそうに目を細め、空を見上げる彼。秋真っ只中。うろこ雲が空を覆い尽くしていた。
「とりあえず、荷物置きに行こっか。」
彼の言葉に応じ、歩き出す。知らない街並みに目を泳がせていると彼は笑った。
「御山さん京都初めて？」
「いや、多分初めてじゃないはずです。」
曖昧な返答に変なのと彼はまた笑った。秋空の下で彼の笑顔が眩しくて目を逸らした。
ホテルについてカウンターに手を着く。
彼がホテルマンと話しているところをじっと見つめていた。
「申し訳ございません。ダブルの部屋しか空いていないのですが……」
ホテルマンの方が申し訳なさそうに言う。
「どうする？」
彼が私に聞いた。彼の顔をじっと見つめて
「……別に、いいですけど。」
そう言うと彼は私を見つめて少し黙る。なんだろ。なんか変なこと言っただろうか。
彼はふっと鼻で笑ってホテルマンの方に笑顔で頷いた。
部屋に入って荷物を置く。肩の疲労が一気になくなってふぅと一息ついた。
「どっか行く？」
「……君に着いて来たので行きたいところは無いです。」
「冷めてんなぁ。まぁいっか。」
彼はそう言ってベッドに飛び込む。
私もベッドに座ってペットボトルのお茶を1口飲んだ。
「清水寺は？」
「どこでもいいですよ。」
「紅葉見たい。」
「そうですね。」
彼の呟きに私が答えるだけ。私たちのコミュニケーションはこれだけ。お互いに何を思っているかなんて分からない。
私は自分が何を思っているかすらも分かっていないが。
彼が勢いよく起き上がって、準備を始める。私も立ち上がって彼の後について部屋を出た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 16人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
けろすけ(プロフ) - ありがとうございます!!嬉しいです！これからもマジで頑張ります！ (2020年4月23日 11時) (
レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
hina(プロフ) - コメント失礼します。いっつも楽しみにしてます。描写がめちゃめちゃ好きで読んでると思わず「儚ねぇ,,,」ってなります。応援してます！これからも頑張ってください！ (2020年4月23日 1時) (レス) id: eee79864a1 (このIDを非表示/違反報告)
けろすけ(プロフ) - すずどらさん» コメントありがとうございます!!良かったです!!勢いで投稿しているので、消したり作り直したり沢山すると思いますが完結できるように頑張ります！ (2020年4月21日 15時) (レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 初コメ失礼します。良いですね、涙腺が緩みっぱなしです。izwさんと夢主ちゃんの暖かい風景に隠れた切ない秘密がぐっと来ます。izwさんがいなくなったらメンバーは号泣しそうだな、なんて妄想しています。勝手に語ってすいません。これからも頑張って下さい。 (2020年4月21日 11時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：けろすけ | 作成日時：2020年3月20日 13時
