第10話 ページ11
月曜、火曜、水曜、木曜、私は彼に会わなかった。彼からの連絡もない。まぁこれがいつも通りの普通の日常なのだから特に気にしていた訳でもなかった。
金曜日、いつも通り出勤し受付をしていると彼が病院に入ってきた。
そうか、彼は金曜日に来るんだ。
その時ふと、自分が曜日をきっちりと覚えていたことも、他人のことを気にしたことも、スマホの通知にすぐに気がついたこともなかったことを思い出す。
何か、違う。いつもと違う。
そう気がついて自分の手を見つめた。
「何してんの？」
声を掛けられ前を向く、きっと彼だろう。
ゆっくりと目線を前に向けると彼が不思議そうな顔で私を見つめていた。
「何？なんか悩みでも？」
「貴方に言われたくないです。」
私の返答に彼は歯を見せて笑う。
「今日も通院ですか？」
「え？知らなかったの？」
「興味無いので。」
「それは悲しいよ」
淡々と続く会話。会話と呼べるのだろうか。
彼がまた受付カウンターから身を乗り出す。
「今日はオフィス来るんだよね。話があるからよろしく」
「今すればいいじゃないですか。」
「仕事中でしょ？そういうことはちゃんとするの。俺でも。」
自分で自分を自虐してどうするんだろうか。そうですねと彼と目を合わせずに言う。
「仕事中なんで」
そう言うと彼はニヤッと笑って
「やられた」
そう言って諦めて待合室の席に静かに着いた。
テキパキと仕事をこなしていくと先輩から声を掛けられた。
「ねぇ、さっき話していた人って何なの？」
さっき、私と今日話した人は彼と先輩だけ。きっと彼のことを指しているのだろう。
「別に、ただの知り合いです。」
QuizKnockの社長だとか言っても良かったが面倒くさかったので”ただの知り合い”と答えた。
「そう？仲良さげだったけど。」
「そういう人なんですよ。」
ふーんと言いながら私から離れていく。
息を吐く。もう何度も吐いたけど、一番深く吐いた気がする。
人に興味を持たれたのも初めて、いや2回目？
彼が初めてか。
人と関わるのも面倒くさいと思っていたのに、私は何故彼について行こうと思ったんだっけ。彼に惹かれたんだろうか。
彼の強さに惹かれたんだ。人生を楽しんでいる彼をもっと知りたいと思った。私と正反対の彼を。彼になりたかった。
生きていても何も無いと思った。
”なんで笑わないんだろうね”
声が聞こえた。涙だって出なかった。
死んでも誰も悲しまないと、生きていても誰も笑わないと思った。
泣いてみたいと、笑ってみたいと願った。
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けろすけ(プロフ) - ありがとうございます!!嬉しいです！これからもマジで頑張ります！ (2020年4月23日 11時) (
レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
hina(プロフ) - コメント失礼します。いっつも楽しみにしてます。描写がめちゃめちゃ好きで読んでると思わず「儚ねぇ,,,」ってなります。応援してます！これからも頑張ってください！ (2020年4月23日 1時) (レス) id: eee79864a1 (このIDを非表示/違反報告)
けろすけ(プロフ) - すずどらさん» コメントありがとうございます!!良かったです!!勢いで投稿しているので、消したり作り直したり沢山すると思いますが完結できるように頑張ります！ (2020年4月21日 15時) (レス) id: 38524bae7d (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 初コメ失礼します。良いですね、涙腺が緩みっぱなしです。izwさんと夢主ちゃんの暖かい風景に隠れた切ない秘密がぐっと来ます。izwさんがいなくなったらメンバーは号泣しそうだな、なんて妄想しています。勝手に語ってすいません。これからも頑張って下さい。 (2020年4月21日 11時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：けろすけ | 作成日時：2020年3月20日 13時
