許して ページ10
見つめ合う。
これまで何度も見つめ合ってきた。
だけど今日は今回はすごく特別だと思う。
キスをする。
いつもより甘くていつもより愛おしくて
俺はお前しか選ばないよ。そう誓う。
ネオンの街が俺たちを照らす。
世界が俺たちの為にあるともう一度思った。
それから2人で並んで帰る。
いつもより2cm近い距離。
熱や鼓動が伝わってしまいそうだ。
貴「ごめん...」
小さく呟いた君の声は冷たい世界に溶けていった。
君は俺の服の裾を握る。
そのひとつひとつが愛おしくて堪らない。
俺はその小さくて強い手をとる。
細くて冷たい手が俺の手を握る。
帰り道はいつも以上に輝いて見えた。
オフィスに帰るとこうちゃんと山本が出迎えてくれた。
2人は普段通りに接してくれて本当にいい仲間を持ったと思う。
2人は俺たちの顔を見るなり満面の笑みで
山本＆こうちゃん「おかえりなさい!!!!!!」
2人の笑顔を見てると泣けてくる。俺は恥ずかしくて目を逸らす。
すると奥から、川上が出てきた。
川上「動画、撮りましょうよ」
川上のことだからきっと察しがついているんだろう。
そんなちょっとした気遣いが嬉しくて堪らない。
Aは涙目になりながらも、3人と一緒に奥へと走っていった。
色々抱えて、辛くなってこぼれ落ちてしまった涙を完全に枯らすことは難しいかもしれない。
だけどどうかこれからも、俺の隣で笑っていて。
25歳にもかかわらず、俺も一緒に駆け出した。
次の日、俺たちはまた姉のところに来ていた。
俺達と目を合わせようとしない。
伊沢「絶対、仕事と両立するから、どうか認めて欲しい。」
貴「お願いします。」
今回も同じなんだろうか。
もう涙なんて見たくないのに
姉「ごめんなさい。」
想定外の言葉に耳を疑った。
姉「本当にごめんなさい。拓司が羨ましくて、妬ましくて、悲しい思いをさせた。ああすれば、もう諦めると思ってた。」
俺達は、姉の言葉を無言で聞いていた。
姉「認めるわ。だから私を許して。」
不器用な言葉に笑みがこぼれる。Aも、俺も勿論と頷いた。
言葉にするのってなかなか難しくて、今の感情を一言で言うとか多分どれだけ語学を勉強しても無理だと思う。
ただ1つ言えるとしたら
めちゃくちゃ嬉しい。ただそれだけ。
オフィスに帰るとみんながどうだったという目で俺達を見つめる。
俺とAは見つめ合って、皆に微笑み頷いた。
みんなはまるで自分の事のように喜んでくれた。
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作者名：けろすけ | 作成日時：2020年1月13日 18時
