小さな探偵の正体を知る義眼の女子大生が公安の協力者になる話。【ゼロの執行人】

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　「結衣ちゃん結衣ちゃん。ちょっと良い？」




　「はい？」





　講義の合間にちょっとデザイン科に寄ると、悠里先輩に声をかけられる。






　「次必修科目だったら全然良いんだけど、資料の整頓手伝ってもらえないかな？





　南側の一角、ずいぶん前の先輩方が残してったのがごちゃ混ぜになってるらしいんだ」






　予定していた講義は必修科目ではなかったので、了承して南側へと向かう。





　で。





　「……ホントにごっちゃ混ぜですね」





　デザイン科の床の大半を埋め尽くす資料もかなりな量だけど、ここのは人が通る隙間が空いてない分密度が高い。





　本限定のゴミ捨て場かここは





　資源回収のリヤカーみたいだよね、と悠里先輩も似たような感想を述べてカーディガンの袖をまくり、手前の山をゴッソリと持ち上げる。






　「まー、虫食いあったり損傷が酷いものは脇にまとめておこ。





　貴重な資料とか間違って勝手に処分すると職員の人に怒られるし。





　一先ずは保存状態が良いのと悪いのと分けていこっか」





　「はい」





　返事をして、私も自分の頭くらいまでの資料を抱える。





　端から綿がはみ出たソファに胡座をかいて半分ほど選別をこなしたときだった。





　ゴッ、ズドステァン！ と凄まじい音が耳に届く。





　急いで音がした方に行った。





　「悠里先、輩……！？」





　映画の演出みたいに、空中をふわりふわりと舞う紙類。






　「…………改めて自分のドジさを理解した。痛い。いと痛し」






　両手を上に投げ出した見事なスライディング体勢で、悠里先輩がぼそぼそと呟く。





　……いや、なんで枕草子？





　内心ツッコミつつ手を貸して、散らばった紙を拾う。





　悠里先輩は足下にあった若干クシャッとなった新聞紙を手にとり、睨みつけている。






　「何これ……中部地方の新聞じゃん。誰よ持ってきたの」





　理不尽にもそれを丸めて飲み込みでもしそうな勢いで眺め回す。









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