ナベリウス・カルエゴと恋の自覚 ※カルエゴ学生時代 ページ10
音楽祭、その数日前。
俺達はミュージカル形式を取る事にした。クラスの多数決で決まったものだ。
しかし、悪魔は目立ちたがる者が多い。ソプラノ、アルトorテノール、テノールorバスの三階層メイン歌唱パートを決める時は荒れに荒れた。
俺はピアノを任されたが、正直期待などしていなかった。誰であろうとも、しごきあげる気でいたからだ。
結果、オーディション形式で決める事になる。話し合いなどで決まる訳はなかった。
女は美声だと言う理由で他の悪魔から推薦され、アイツ自身も歌が好きだと舞台に躍り出た。
メイン歌唱は満遍なく歌える者でなければならない。
ソプラノパートは良く目立つが、声量が細ければ掻き消える。
響きやすく、誤魔化しが効かない。
かと言って主張し過ぎれば響きを崩す。
更に、課題曲では出す事さえ難しい高音を要求されていた。
そんなパートだと言うのに──
「聞いててね、エギー。君の為に、歌ってあげるから」
あぁ、腹立たしい事この上ないな。
こんな形など、予想出来るか。
女の──Aの歌声は非の打ち所なく完璧で、残酷なまでに美しかった。
──俺の聴覚が、感情が、視線が、全てが奪われていく。
──感情をさらけ出して歌う姿に、心臓を握り潰される心地だった。
──その歌声は名奏者に奏でられたヴァイオリンのように美しく、聞き入った。
──
クソ。……あぁ、クソッ!!
こんな形でくだらない『恋』など、自覚してたまるか。
そう思っても、もう、既に全てが手遅れだった。
──俺は、フォカロル・Aという悪魔に溺れてしまったのだ──
その瞬間。場に居た全ての悪魔が、ソプラノ歌唱パートを女に任せる事を決めた。
いや、満場一致かは怪しいだろう。
「俺は、コイツがメインソプラノでなければ弾かん!!!」
俺がそう言い放ったから決まったようなものだ。
代表としてどうだという発言もあったが、そんなものは無視した。少数だろう。
俺も悪魔だ。
我慢などしない。
権力があるならば、有用に扱わねばならんだろう?
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作者名:とある誰かの作品倉庫 | 作成日時:2023年10月13日 0時