ナベリウス･カルエゴの憂鬱と妻の日常【魔入間】 (ページ6)

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ナベリウス･カルエゴと女の日常 ※カルエゴ学生時代ページ6

翌日。
相変わらず、女はあの貼り付けた笑みで他の悪魔共の対応をしている。
あの女を連れて来いと言った先輩の気が知れない。何を考えているんだ。

──ふと、振り向いた女の視線とかち合う。

｢っ……｣

少し、動揺した。
今は隣にシチロウもいない。俺一人だ。
いつものパターンなら、『仲良く』しに来るだろう。

｢……｣

しかし、女は一瞬後には視線を逸らし、また雑談の輪の中に戻っていく。
それもそうか。アイツにはアイツの世界があって当然だ。
だが、妙に癪に障る。
何故、声もかけずに無かったことにしたのか、と。

ガラの悪い連中も、アイツには敵意を持って近付くことは少ない。
不用意に敵に回しても得は無いとわかるなら、当然だろう。
アイツは傍に置いた方が『都合がいい』と言った奴もいる。

『かなり執着してるじゃないですか』

意地の悪い先輩の言葉が過ぎるが、認める気は無い。
執着などでは無い、情報収集だ。
それ以上でも、以下でもない。

｢今日、凄い見てくるじゃん｣

──昼休み。
珍しく先輩からの『命令』が無く食堂で昼食を摂っていた俺に、女は声をかける。
ニコニコといつもの笑みを浮かべたまま、さも当たり前のように俺の隣に腰掛けてきた。

｢気の所為だろう｣
｢違うね。今日はやけに目が合うから｣
｢……今日はブラックコーヒーを持っていないようだが｣
｢あ、話逸らした｣
｢勘が良い事も考えものだ｣

軽口を言いながら食事を口に運ぶ女。
表情を綻ばせ、素直に感情表現をする姿は、何も知らなければ良い評価を得るのだろう。
俺の返事を聞いているのかいないのか、その態度では推し量る事が出来なかったが。

俺も気にせずに食事を再開する。
口を動かす女の食事量が気になり視線を向けた。

｢よく食べるな｣

俺の独り言に近い言葉を拾い、こくりと喉を上下させて口の中のものを飲み込んだ女。

｢エギーは少食だよね。ちゃんと食べないと身体持たなくない？はい、あげる｣

そう言って、さも当然だと言わんばかりに俺の口元に料理を刺したフォークが運ばれる。
ずい、と突きつけられた料理。
──……行動が理解不能だ。

｢少しは恥じらいを持て｣
｢え？……あ、間接とか気にするタイプ？それはごめん｣

女は目を丸くし、フォークに刺さった料理を俺の口元から自身の口の中へと収めた。
女としてどうなんだ、それは。

｢お前は気にしないのか｣
｢うん。一口ちょーだいとかよくやる｣

ほんの少しばかりだが、女のことが心配になった。