ナベリウス･カルエゴと女の噂 ※カルエゴ学生時代 ページ5
フォカロル･A。
この女に関して情報を聞いていると、悪い噂はあまり聞かない。
ある生徒は｢頭が良くて、テスト対策までばら撒くから都合がいい｣と言った。
イラついたので、(ケルベロビュートで)殴っておいた。
ある生徒は｢容姿端麗、才色兼備。心優しく、完璧な悪魔だ｣と言った。
俺の悔しがる顔が見たいなどと言っている女だぞ。優しい訳があるか。
思わず鼻で笑ってしまった。
終末テストの結果、クラスの平均点を底上げした功績、更に作ったテスト対策プリントで分析力が評価され、ランク昇格したという話も聞く。
バビルスで異例となる、現在ランク
只者ではなかったらしい。
｢そんなに気になりますか｣
──屋上。
使いっ走りとして散々使われた後、クソな先輩ことオペラ先輩から、こう切り出された。
俺が密かにやっていた情報収集がバレていたらしい。
｢先輩には関係の無い事でしょう｣
｢え？面白そうじゃないですか。酷い執着──いや、学生らしく青春を謳歌するカルエゴ君｣
面倒な事にならないよう、簡潔な返事をした筈だ。
しかし、この性格の悪い先輩は、話を広げようとしている。気味の悪いことも言いかけていた。
腹立たしい事だ。
｢あの女の化けの皮を晒してやり、一矢報いてやる為だけです｣
｢かなり執着してるじゃないですか｣
｢でも、あの子は本当にただ悔しかっただけじゃないかな｣
シチロウ、お前もか。
擁護するような台詞に眉間に皺が寄る。
｢ほう？｣と先輩の視線がシチロウに向けられる。
｢そういえば、お二人と例の彼女はクラスメイトでしたね｣
｢そうですね｣
｢納得いきませんが｣
そう、ただのクラスメイトのはずだった。
しかし、俺が終末テストで負けた後、宣告通りにあいつは、俺が一人になる瞬間を狙って『仲良く』しにくる。
──女が自分では飲めないブラックコーヒーを片手に。
正直に言えば、目障りで仕方がない。
｢うーん、あの子と話してる時のカルエゴ君、ちょっと楽しそうなのにな｣
｢結構鈍いですよね、カルエゴ君｣
｢先輩もそう思いますか？｣
｢思いますね｣
そんな訳あるか。
シチロウとオペラ先輩の会話に対し、内心悪態をつきながら、中庭であの貼り付けた笑顔を他の悪魔に向ける女を観察する。
｢そうだ。今度連れてきてください。私も是非、会ってみたい｣
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作者名：とある誰かの作品倉庫 | 作成日時：2023年10月13日 0時
