モラクス・モモノキの一生懸命 ※過去編 ページ29
名刺を貰った瞬間、今まで話した事が蘇る。
私が混乱している間に、バラム先生とAさんは何か話し込んでいるようだった。
「でも、僕にバトンタッチするの珍しいね」
「今回はね〜。ほら、私の学生時代を知ってるちーくんなら力になれるでしょ?」
「それ、話していいの?」
「むしろ、今モモノキさんに必要なのはそれでしょ?」
……コンサルタント。
話を聞いてもらって。
慰めてもらって。
力になれるような悪魔まで紹介してくれて。
あれ、これって本当はお金払わなくちゃいけないんじゃ……!?
いやでも教師同士だし……というか悪魔心理学の教授!?
「あ、あの!お金とか!!」
「あ、いらないですよー。ブラックコーヒー飲んでもらいましたし。助けてもらったんで」
その一言で、更に思い出す。
手の中のブラックコーヒー、いくらだっけ!?
「そうだわ、ブラックコーヒーの代金!」
「貰い物ですから、気にしないでください。寧ろ助かりました」
「でも……」
「今はとりあえず、生徒達への対抗手段を考えてください。それが一番嬉しいです」
慌て続ける私の肩に手を置き、落ち着くようにとさすってくれる。
どこまで優しい悪魔なんだろう、と思ってしまう。
──ただ、帰る前。
彼女が振り返って、微笑みかけて、こう言い残していった。
「教育担当の先生ですけど……厳しく見えるだけで、きっとあなたの一生懸命さもわかってくれてますよ。新任教師のお嬢さん」
……『新任』教師って、バレていた。
一生懸命だって、話しただけで認めてくれた。
正直、どこでバレたのかもわからなかったけど、嬉しかったわ。
少し、顔が熱かった。
「それじゃ、話詰めましょうか」
「はい!」
彼女とは一旦別れて、バラム先生と作戦会議。
それから、先生達にも話を聞いて。
生徒達も真剣に授業を受けてくれて。
カルエゴ先生に頼まれたから、って先生方が口々に言ってくださって。
カルエゴ先生のノートを見た時、嬉しくて、顔が熱くて。
彼女の言葉を聞いた時と、同じ感覚。
『きっと、誰よりもあなたの一生懸命さをわかってくれてますよ』
あぁ、そうね。
私の事を認めてくださっていた方だった。
それも、全部わかった上で、彼女も話しを聞いていてくれたのかしら。
後から連絡しようと電話番号を入れたのだけど、電話が出来たのはそれから数日後だった。
通話ボタンを押すのに、手が酷く震えていたわ。
『はい、フォカロル・Aです』
「あ、あの!モラクス・モモノキです!」
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作者名:とある誰かの作品倉庫 | 作成日時:2023年10月13日 0時