ナベリウス･カルエゴの憂鬱と妻の日常【魔入間】 (ページ27)

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モラクス･モモノキと奥さんの話 ※過去編ページ27

｢そういえば……モモノキ先生はカルエゴ先生がお好きなんですよね？｣

女子会部屋。
エリザさんからそう切り出され、自分の顔が熱くなるのを自覚する。

｢いや、だから、それは憧れとかで……！｣
｢でも、エギー先生って奥さん居るよね？｣

クララさんの言葉に、胸が締め付けられる。
……そう。カルエゴ先生には奥様がいらっしゃる。
それは私達教師陣も知っているし、私は直接お会いしたこともある。

｢……知ってるわ｣
｢そうなのか！？カルエゴ先生がご結婚なされていたとはな……初耳だ｣
｢あ、あの……え、っと……｣

アメリさんの言葉に、目線が下がっていくのを自覚していた。
そんな私の様子に、ケロリさんが慌て始めるのを後目に確認している。
けれど、別に私は落ち込んでいる訳では無いのよ。

｢慌てる必要は無いわ、ケロリさん｣
｢で、でも……｣
｢私、カルエゴ先生の奥様の事も好きなんですから！｣

思わず言葉に熱が入ってしまったわ。
場の空気が沈黙に包まれて、数秒──

｢｢｢ええぇぇぇぇ！？｣｣｣

女子会メンバーの悲鳴にも似た叫びが響き渡った。
私、そんなに爆弾発言したかしらね……
でも、回り出した口は止まらない。

｢出来るなら、お二人ので、デートとか見たいなと思うくらいで！｣
｢あ、会ったことは！？｣
｢あるわ！本当に素敵な方よ！一言で言うなら……｣
｢言うなら……？｣

場の全員が息を呑む音が聞こえる。
食い入るような視線が刺さる中、私はあの方との出会いを思い出す。

優しい紳士。
でも余裕のある淑女でもある。
純新無垢な少女で。
悪戯好きな男の子な一面も。

あの人を一言で表すなら──

｢──悪魔たらしな方ね。誰もがきっと好きになって、溺れてしまうような方よ｣

私の一言に、場の全員が固まる。
表情に、疑いの色が強く出ているわね。
でも、私はそう思ったんだもの。
カルエゴ先生が好きになって、ご結婚なされたのも納得してしまうような方。

そう、出会いは──

｢お嬢さん、ブラックコーヒーって飲めます？｣

───新任時代、生徒にナメられ泣いていた時だ。

蹲っていた私に合わせて、彼女もしゃがみこんで視線を合わせてくれた。
缶のブラックコーヒーを差し出して、眉を下げて笑いかけてきた。

｢……あ、あの……｣
｢人助けだと思って貰ってください。私、甘党だから飲めないんです｣

悪魔好きしそうな笑顔。優しくて安心する声。
彼女は、するりと私の心に入ってきたの。