ナベリウス・カルエゴとSD ※過去編 ページ16
Aが俺のSDになってから数日。
「家事は俺がやる。お前はただ護衛さえ出来ればそれでいい」
「セキュリティデビルとは」
「粛に。お前に家事の能力があれば頼んだわ阿呆!!」
「それはそう。マジでごめん。解雇されてもしゃーないわ」
秘書、護衛としては完璧だったが、この女には弱点があった。
──家事が壊滅的だった。
料理はできる。
洗濯は出来なくはないレベル。
──だが、掃除。これが壊滅的に出来ない。
整理整頓から教え込まねばならんレベルでダメだった。
自分でやった方が幾分マシだ。
俺が居ない日は食事も忘れ研究に没頭し、最近は魔術研究会にも手を伸ばし新魔術を考案、貢献する始末。
更には、悪周期に入りやすい特性も重なり、早くも後悔し始めていた。
「約束をした時点の俺にコイツの生活能力を見せてやりたくなるな……」
「面目ねぇ……」
謝りはするが、恐らくコイツに改善を求めるのは『不可能』だった。
コイツ本人は俺のSDなどやめても困りはしないのが、より事態を悪化させている原因だ。
先述の魔術研究や悪魔心理学の教授、フォカロル家の『コンサルタント』業務なども副業としてやっており、未だにスカウトしようとする者は後を絶えない。
──正直、この女に惚れて無ければ手放していた。
同居してから数日。
流石に『恋』も長年拗らせていれば慣れもする。
同居生活に多少心躍るかと思った日もあったが、一日でAの壊滅的な家事能力を前に瓦解。
もうどちらが主人かわからん。
この状況をシチロウに言うも、驚かれるだけで状況を打開する案もなく、背中を押されるのみだった。
それどころか、「もういっそ別方面に行かせちゃったら?」と言われる始末だ。
誰が手放してやるか。
「エギー、それだと仕事出来たことにはならないし、もう無理しないでいいよ?」
「無理では無いわ。無理であってたまるか」
「だって、仕事ちゃんと出来ない私にお金払うのも無駄じゃない?」
「何度も言わせるな。それ以上言ったら食い千切るぞ」
「パワハラじゃんそれは」
そうも言いたくなるわ、アホ。
家事の能力は無いが、コイツの家の家業が『コンサルタント』なだけあり、話を聞くのは上手い。
話していると、解決策が簡単に見つかる事が多くある。
それだけでも価値があると言えた。
「お前は本当に惜しいな」
「うーん……というより、エギーの前だと本音が出ちゃうのかもね」
……この悪魔たらしめ。
ナベリウス・カルエゴと酒の過ち ※過去編→←ナベリウス・カルエゴと卒業 ※カルエゴ学生時代
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作者名:とある誰かの作品倉庫 | 作成日時:2023年10月13日 0時