ナベリウス･カルエゴと野次 ※カルエゴ学生時代 ページ11
──中略。
音楽祭は優勝した、と言っておこう。
途中、紆余曲折はあったが当然と言えば当然の結果だった。
クラスの団結力が高まったは良いが……
｢ナベリウス〜！言いたいことあんだろー？｣
｢Aちゃん、ほらほら！前出て！｣
どうしてこんな羽目になっとるんだ！！
表彰が終わり、教室に戻った後の事だ。
所謂『やかましい』部類のクラスメイトが騒ぎ始め、何だか知らんが俺とAを黒板前に立たせた。
｢ヒュー！！今回の功労者達に盛大な拍手をー！！｣
立った途端、周りは冷やかしを始め、シチロウさえも止めに来ない。
なんだ、やめろ！その温かい目で俺を見るな！！！
何が『頑張れ』だ！その紙を下げろ！！！
｢なんか大変な事になってるね……｣
｢馬鹿共がふざけおって……｣
｢巻き込んでごめん。後でなんか奢る｣
｢いらんわ｣
こちらはこちらで場慣れしているのか、あの作られた笑顔で対応していた。
器用なのはいい事だが、コイツの悪周期の原因がしてならん。
面倒な『恋』の自覚から、コイツと目を合わせる事が難しくなっていた。
気色が悪い作り物の『笑顔』は見られるが、感情が出る方の表情は直視出来ん。
今、隣に居るだけでも動悸が激しい自覚がある。表情に出さんよう必死だ。
更に言えば、コイツ自身は気付く気配すらないにも関わらず、シチロウ、オペラ先輩、どこ経由なのかクラスメイトにもバレた。何故だ。
｢目、合わないね｣
｢……合わせる必要無いだろう｣
嘘だ。本当は合わせると調子が狂うと合わせられなかっただけだ。
シチロウの
｢そうかな。音楽祭の期間、ずっとそうだよ｣
｢お前が気にしすぎているだけだ｣
流石に不自然だったと後悔している。
だが、心理的な問題として無理だ。
どうしようもない感情への向き合い方がわからん。
｢私は仲間だと思ってるんだけどさ……エギーにとっては違った？｣
──クソッ。
コイツはどうして、そんな事を直接尋ねる事ができるんだ。
信頼されているという自覚は持てるが、むず痒くなる。
言ってしまう事さえ出来ず、足踏みしようとしている俺をからかわれている様な心地さえする。
｢……後で、売店に付き合え｣
俺の言葉にAは目を丸くする。
｢え？｣
｢ブラックコーヒーの料金だ。……請求されないのなら、その分お前に奢り返す。問題ないな｣
俺の返事に周りから野次が飛んでくる。
だが、そんなものどうでもよかった。
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作者名：とある誰かの作品倉庫 | 作成日時：2023年10月13日 0時
