後日談 ページ22
「お疲れ様です、本日の報酬ですよ」
マドルを受け取り、財布に入れる。
アズール先輩は上機嫌な笑顔を浮かべていた。
何かいい事でもあったのかな……
私はVIPルームのソファに座り、帰りの許可を待つ。
「まさか、イデアさんと既にお知り合いだったとは。嬉しい誤算ですね」
「んー……私もイデア先輩とは思ってなかったんですけどね。なんか、知り合いでした」
「ふふ、良いじゃないですか。また次の依頼に繋がるようにして来たみたいですし」
アズール先輩の言葉に驚いた。
え？私、営業活動なんてしたっけ？
余計な事を言うとややこしくなりそうなので黙っていた。
だが、アズール先輩はこちらを見ると呆れた様にため息を漏らした。
「……もしかして、自覚無いんですか？」
「え、なんでですか？」
「顔にそう書いてあります」
『とにかく、この調子で頼みますよ』と言う言葉と共に、シッシッ、と払う様な手の動きをされる。
ソファから立ち上がり、一礼。
VIPルームから出ようと、ドアノブに手をかけた──その時。
「自身の家柄に関係なく、楽しんで下さいね」
後ろから、そう声をかけられた。
ドアノブから手を離し、アズール先輩に向き合う。
彼は、酷く優しく微笑んでいた。
「……寮長、あの──」
「呼び方、いつもので結構です」
アズール先輩は、そう言いながら自分の席から立ち上がり、私の前へと歩み寄る。
数秒の逡巡。
迷っている間に、すぐ傍に来たアズール先輩を見上げ、口を開く。
「……アズール先輩」
「はい、何ですか？」
「もしかして、これって私の為ですか？」
「少しはそうかもしれませんね。Aさんは、人と距離を取りがちですから……」
『理由が理由ですから、気持ちはわかりますがね』と続け、私の髪を梳くように撫でる。
──この人は偶に、酷く狡い。
偶に、こうして訳もわからず優しくなるのだ。
悪い噂を聞いた時に、『他の生徒がわかってないだけ』と庇いたくなる程に。
黙り込む私。
アズール先輩は自分のハットを私に被せ、背中を押す。
「泣くのなら、自室にしなさい。人払いはしていますから」
『送りますか？』と問われるが、フルフルと首を横に振って断る。
『失礼致しました』と放つ言葉が、酷く震えていた。
VIPルームを出て、自室へと向かう。
「……好いた雌には、せめて優しくしたいものですよ。……なんて、伝えてもAさんを苦しませるだけだ。わかってる……」
後日談 another→←君達にはそれが当たり前なんだね『イデア編』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 209人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とある誰かの作品倉庫(プロフ) - みーさん» わぁ、ありがとうございます！誤用しがちだったので助かります！ありがとうございます！ (2021年6月3日 20時) (
レス) id: ba04661380 (このIDを非表示/違反報告)
みー(プロフ) - すみまへんめちゃくちゃ誤字してました！謙遜する場合は「力不足」となります！本当すみません(泣) (2021年6月3日 15時) (レス) id: 9c701de065 (このIDを非表示/違反報告)
みー(プロフ) - 初コメ失礼します！ページ25で夢主ちゃんが言っていた「役不足」は「役目が実力不相応に軽いこと」「与えられた役目に不満を持つ」となりますので、謙遜するのでしたら「役不足」が適任かと思います！楽しく読ませてもらっているのに初コメがこんな内容ですみません！ (2021年6月3日 15時) (レス) id: 9c701de065 (このIDを非表示/違反報告)
とある誰かの作品倉庫(プロフ) - 43さん» 正解です！主人公の家柄はクトゥルフ神話系統の封印をしている設定になってます！気付いて下さり、またコメント頂きありがとうございます！ (2021年6月2日 11時) (レス) id: ba04661380 (このIDを非表示/違反報告)
43 - お話の構造とか滅茶苦茶好きです…！もしかしてクトゥルフ要素入ってますか…？ (2021年6月2日 10時) (レス) id: 1d67640196 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とある誰かの作品倉庫 | 作成日時：2021年5月27日 4時
