27話 ページ28
私が言葉を開く間もなく、アッくんは屋上の策を超えたところに立つ。1歩間違えれば転落なのに、アッくんは言葉を続ける。
「矛盾してて申し訳ないけど、東卍からは手を引いた方がオマエの為だ。マイキー君は、オマエのこと気に入ってる。なんかしたのか？」
「覚えないんだけど」
あれか？兄貴に似てるってやつか？？え、でもそれだけで？……ハッ！まさか、私の魅力に気づいたのかな！？
「オマエの考えてることが手に取るように分かるわ」
「褒めんなよ」
「……ほんと、オマエといると、決意が揺らぐな」
決意……？まさか……！
「どう生きるかは、オマエの自由だ。だから、まあ、頑張れよ。じゃあな、泣き虫のヒーロー……いや、ヒロインか」
「待って、アッくん！降りて、ダメだよ、久しぶりに会えたのに、こんな……こんな……！！」
「愛してたよ、A。元気でな」
「アッく……」
視界から、アッくんが消えた。慌てて駆け寄って下を見ると、顔を地面にぶつけ、血を流して倒れたアッくんが見えた。
……人が……大切な人が……友人が……仲間が死んだのを、初めて見た……。
「ああ……ああっ」
足の力が抜け、地面に座り込む。
「アッく……いや、いやあああ！！アッくん、ねえ、なんで！？！？……やだ、やだよッ、アッくん！！あ゛あ゛あ゛！！！」
なんで、私に逃げる道を用意したの……なんで最後にあんな呪いみたいな言葉吐いたの！！ねえ、なんで、どうして……。
◆
気づいたら、警察が来ていた。喉が潰れかけて声が枯れている。女あるまじき声だが、苦笑すらでない。
「しばらくそっとしといてあげてください」
直人と警察が話しているのが見えた。
「気遣わなくていいよ、事情聴取でしょ？」
「Aさん、無理しないでください。少し休みましょう」
「いいって。それより、私が事情聴取を受けている間に、龍宮寺堅……ドラケンの死んだ日を調べてくれる？
東卍を巨悪にしたのは、稀咲鉄太だ、間違いない。
直人、私はドラケンも！アッくんも！ヒナも！みんな助けたい。アッくんが言ってたみんなには、まだ他にも人が含まれてるはず。だから！」
「分かりました」
私は涙を拭うと、立ち上がる。……つーか、1個言いてえわ。
私別に泣き虫じゃないし！！！！
「1個だけいい？」
「なんですか？」
「アッくんは、即死？」
「はい」
「そっか。なら、良かった」
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作者名：くー | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Qoo01411/
作成日時：2022年7月4日 20時
