1話 ページ2
「都内での東京卍會の抗争は激化する一方、ついに一般人にまで被害が」
「ウソでしょ？マジかよ。こっわ」
ポテチを食べながらあぐらをかいて座っていると、なかなかに物騒な単語が出てきた。
「犠牲者は数名。内、死亡者2名」
へえ、死人も出したのか。
「死亡したのは、橘直人さん、25歳」
「橘、直人？」
なにやら聞き覚えのある名前が出たため、テレビの音量を上げる。
「そして、橘日向さん、26歳」
橘、日向……？
聞き覚えしかないその言葉に目を見開くと、突然、玄関を叩く音がした。……チッ、またあのババアか。
「何度言ったらわかるんだい！！？テレビの音がうるさいよ！！！」
んな事言ったら、夜な夜なてめえのいびきで眠れねえわ。
「すいません」
扉を少し開けて顔を出して謝る。
「まったく、近頃の若い奴は！！」
ったく、これだから中年は……。
◆
「何度同じ事を言わせるんですかね〜〜？花垣武道さ〜〜〜ん。DVDは返却されたらすぐに陳列〜〜〜。何度も言いましたよね〜」
苛立った気持ちで職場に向かったため、またもやミスをしてしまったらしい。
「スイマ……」
「ハイ！謝るだけ〜〜〜！！」
……いや、分かってるんだったら言うなし。
◆
苛立った気持ちで駅に向かい、改札を通ってホームに着く。そして息を吐いた。
「……チッ」
壁の薄いボロのアパートに、ダルい隣人、6歳も下の店長からバカ扱い。恋愛経験ゼロ。極めつけは処女。……あれ、私、どこで間違えたんだ？こんなに可愛いのに、彼氏いない歴=年齢ってどゆこと？？
軽く首を傾げていると、突然、誰かに背中を突き飛ばされて線路に落とされた。……いや、は？
悲鳴が聞こえる。顔をあげれば、電車が目の前だった。
「ファーストキスが鉄の味とか、笑えねえ」
キスの前に顔逝くわ。……なんて、馬鹿なこと考えれるとか、私、この人生になんの未練もないんだな……。
死ぬと思った瞬間、思い出したのはろくに顔も合わせていない両親でも、まあまあ仲の良かった奴でもなく、親友の橘日向だった。
……あれ、私ら親友だったよね？？合ってるよね？？
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作者名：くー | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Qoo01411/
作成日時：2022年7月4日 20時
