風柱邸のお手伝いさん。

EPISODE #26 ページ28

【Aside】



時が過ぎるのはあっという間で、



この屋敷に来た時に初めて見た庭の桜の木は葉っぱ
一枚すら身につけていなかったのに

気づけばピンクの美しい花弁を纏い、それが散ってしまうと今度は緑色の爽やかな葉を着ていた。


そして、秋には桜の木ではなく紅葉が主役となる。




『不死川さん、私がここにきてもうすぐ1年経ちますよ。』



不死川「もうそんなになるのかァ。」



『はい。あっという間ですね…。』



不死川「言われてみりゃあお前も少し大人っぽくなったな。｣



『ふふ。そうでしょう？』



1年も過ごしていればもちろん、ここで女中として働くのもすっかり慣れてしまった。



だが、ひとつだけ問題がある。
それは、私が不死川さんのことを何も知らないと言うことだ。


不死川さんは私の心を読んでいるかのように色々とわかってくれている。


なのに私は…。



『不死川さん。』



不死川「なんだァ？」



『自己紹介、してください。』




私がそう言うと不死川さんは何言ってんだこいつという顔で見てきた。



『私、1年もここで働いているのに不死川さんのこと何も知らないんです。だからその…。』



面倒くさそうな顔をしている不死川さん。

やっぱり無理かな…？




不死川「はァ…。

……不死川 実弥 21歳。鬼殺隊の風柱。」




小さなため息を吐き出して
不死川さんが1つずつ話し始めた。

聞き逃さないようにしっかり覚えないと。




不死川「11月29日生まれ。好きな食いもんはおはぎ。」




うん。今のところ私の知っていることだ。





『……次は？』





不死川「終わりだァ。」





『え、もう終わりですか？あ、不死川さん…！』





呼び止めたが遅かった。
不死川さんは庭の方へ歩いて行ってるのでおそらく鍛錬でもするのだろう。




また、知れなかった。




不死川さんには誰にも話せない悩みがあるのだろうか。


もしそうだとしたら私じゃダメなのだろうか。



庭へと向かう不死川さんの背中は何か鉛を引きずっているかのように重たそうに見えた…。



不死川さんが自分の事を話してくれるのは何時だろうか…。

いや、その日は来るのだろうか。






もしかして、私のことはまだ信用出来てない…。






『いやいや、不死川さんは優しい人だ！
私のこと！よくわかってくれてるし………、』





外は快晴なのに気持ちはどんよりと雨雲のように暗かった＿＿＿。

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