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「Aちゃん、これ書いてー。」
向井君に差し出された書類には個人情報を記載する欄。
既にいくつか記入されてるけど、
この字は森本君だな…。
「森本君！勝手に…！」
「え、向井って可能性は！？」
「向井君もう少し字が綺麗だもん！」
「もう少しって何！？
なんで俺流れ弾喰らってるん？？」
2人と軽口を叩き合いながら、文面をきちんと読む。
同意した上で個人情報を記入した。
それを渡辺さんに差し出す。
「担当者さんまでお願いできますか？」
渡辺さんも、宮館さんも驚いた顔をしていた。
さながら鳩が豆鉄砲を食ったような。
あまりのぽかんとした顔に森本君が笑い転げ、
向井君が写真を撮っている。
「俺は、全然いいんだけど…。
むしろ、Aちゃんはいいの？」
「こんな素敵な場所を知ってしまったら
嫌なんて言えませんよ。」
ホストのイメージが180度変わるような素敵なお店。
時間に縛られることなく好きなだけいていいという
空間から、普通のホストとは違うけれど。
お客さんの中には男性も結構いて、
男女関係なく楽しんで帰ってほしいっていう
お店の大切にしていることが見える。
そしてその魅力にすっかり私も憑りつかれて。
書いた書類はこのお店の会員制度登録。
年会費を支払う代わりに毎回飲み物が1杯無料。
また、指名や予約が優先されるとも。
「嬉しいな…。Aちゃん、
こういうホストとか嫌いそうだったし、
もう来てくれないかと思った。」
「たしかにホストって聞くと
いいイメージはないんですけど。
渡辺さんホストらしくないんですもん。」
「えー」と唇を尖らせた渡辺さんに
「いい意味で、って話です」って弁明しておけば
「知ってた」なんて。
顔を見合わせて笑ってしまった。
最初警戒してたのが嘘みたいに打ち解けちゃったな。
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作者名：沙羅 | 作成日時：2021年3月2日 17時
