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「私、あのお店に就職しようかと思って。」
「なにその急展開！？」
後日お悩み相談会と題して2人の働く居酒屋さんに
プライベートとして3人で来店。
そこで本題を切り出した。
「まあ、あそこならAちゃん働いてるとこに
遊びに行っても怒られないもんなあ。」
「慎太郎のその視点はなんやねん。」
「いかにお互いが就職しても
3人で集まれるかを考えている。」
その言葉に向井君も私も黙ってしまった。
もう卒業までは日付が無い。
3人で集まれる機会も減ってしまうかもと。
「まあ、それなら、しゃあないな。許す。」
「なんでよ。」
「俺も、慎太郎も。
卒業しても3人で気軽に集まりたいもん。」
その言葉にぐっと来てしまって。
私が泣き出すと、2人も顔を伏せて。
深夜の居酒屋でなぜか学生3人が泣いていた。
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決意も固まったところで、
渡辺さんに頂いた連絡先に電話を掛けた。
前回お店を訪れてから1ヵ月ほど
経ってしまったけれど、
前回のスタッフさんや覚えている方に
繋がるといいなと願いながら
応答を待つ。
数コール後に「もしもし」と返ってきたのは
聞いたことのない声。
「えっと、以前お店で働かないかと
提案を受けていた者ですが…。」
「…あれ、俺、携帯間違えた。
ちょっと待ってて、今持ち主に代わるんで。」
どれだけのおっちょこちょいなんだろう。
思わず少し漏れてしまった笑い声が
相手に聞こえていないことを願う。
「もしもーし。Aちゃん。渡辺です。
ごめんねー。うちの他のホストが俺の携帯
間違えて持ってったみたいでさー。」
「こんにちは。お久しぶりです。」
「本当だよ。もう諦めようかと思ってた。」
冗談めかして笑うのは相変わらず。
渡辺さんに電話したということは、だ。
用件は話さずとも分かったみたい。
渡辺さんは真剣な声で問いかけてくださった。
「…本当にいいの？
君の住む世界と俺たちの世界は違う。
表の人間にはクラブなんてってバカにされるかも…」
「大丈夫です。
例え何があっても私はあのお店で働きたいんです。
それに、何かあったらまた渡辺さんがお話聞いてください。」
それを聞いた渡辺さんは安堵したように
「そっか」と漏らした。
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作者名：沙羅 | 作成日時：2021年3月2日 17時
