９話 ハルと勇一 ページ10
「こんな森にいるの、おっかねぇババアだけかと思ってた」
「なんで？ 動物もちゃんといるわ」
「いや……。学校の奴等は魔女がこの森にいて、神隠しの魔法使うから近寄らない方が良いって。親も皆言ってるぜ。
昔っからこの森にはおっかねぇ魔女がいるから近づくなって」
「そう」
少し日に焼けた肌が、夏の香りを漂わせる。嗅覚を研ぎ澄ませれば、今にも陽が香ってきそうで。茶色とも黒ともつかない奥の瞳が、ぎろっと私を睨んでいた。
私は億劫な言葉と奇抜な瞳に矛盾を覚えた。
「そんなおっかない魔女がいる森にどうして来たの？」
少年は坂に這いつくばっていたが、立ちなおした。真っ白のシャツにジーンズといったシンプルなスタイルで、清涼感のある顔立ちだった。鼻が高くて、男らしい分厚い唇は少し湿っていた。男は返事を言うのに首をひねっていた。言うのを躊躇っているように見える。
「ひとりになりたかったから」
風が私達の間を通った。私は坂の上、川を挟んで彼は坂の上にいた。シンメトリーな光景ってことだ。
「どうして？ 何かあったの」
「いや……。部活がちょっとな」
「何部に入ってるの？」
「ただの陸上部だよ」
「ただの、ね」
「アンタは？」
「もうやめちゃったけどね。ただの美術部に入ってた」
私は小馬鹿にするように話した。愛想笑いをする必要もないほど、腹がくすぐられた。彼は首の後ろを何度かこすって、
「美術部か。美術部って個性的なやつ多いよな」
「私もその個性的なヤツだから、普通ってのが分かんないけどね」
「そっか」
過去のことを少し思い出した。クーラーも何もない美術部は、大きな小豆色のテーブルが置いてあって、風が通るようにとあらゆる技術を駆使して窓開けを工夫する。風が通った時の肌に沁みる感じを思い出す。北海道では決して味わえない！
「それじゃあ、私サラと約束してるから」
「あ、ああ。――待って!! アンタの、名前は？」
「私？」
私は一瞬、言うのを戸惑った。サラから、魔女は身体を操られるのを防ぐために、本名を明かしてはいけないと聞かされていいた。でも、波留は本名なのか分からなかった。親戚のおばさんからつけてもらった字だからだ。
「ハル！ 海の波の波に、留学生の留。
それで波留！」
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レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 桂馬さま、お読みいただきありがとうございます♪ 見習い魔女と本物の魔女の絡み合いってどうなんだろう？ と思いながら作者ながらに書かせていただきました！ (2015年9月13日 17時) (
レス) id: 6298628eb9 (このIDを非表示/違反報告)
桂馬(プロフ) - 面白かったです。サラさんとハルの日常が好きです。 (2015年9月13日 16時) (レス) id: 28fb1f4f57 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 椋香さん» 椋香さま、読了お疲れ様です！ もうすぐふたりの季節になりそうで、俺としても誰かに読んでほしかったので……。椋香さまに読んでもらえて良かったです。御互いの個性が出て、読み手さんの心に響くような作品を目指していきたいですね(*´-`) (2015年5月28日 17時) (レス) id: 6298628eb9 (このIDを非表示/違反報告)
椋香(プロフ) - 私にはできないな、と思いました。ですからもう少し自信を持って、次の作品作りがんばってくださいませ。長々とごめんなさい、楽しみにしてます。 (2015年5月28日 14時) (携帯から) (レス) id: 79a496978a (このIDを非表示/違反報告)
椋香(プロフ) - 読了しました、確かにハジェンズさんが仰る通り後半の打ちきり感が少し残念にも思えますがハルの『心変わり』のシーンや勇一君のハルへの最後の言葉とかさすが…、となりましたし、 (2015年5月28日 14時) (携帯から) (レス) id: 79a496978a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナンシー・ハジェンズ | 作者ホームページ：https://twitter.com/seshiru777777
作成日時：2014年7月31日 15時
