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「そんなに彼女をライターにしたいの?それとも自分の近くにいてほしいだけ?」

『…どっちも、ですかね』




Aを会社に引き抜こうと考えたのは最近のことだ。

生意気だけどすごく喋りやすい後輩で、俺の事を普通の人間として扱ってくれる数少ない女性。
広範な知識を持っていて、クイズ研究会に入ってる俺との会話で出てくる雑学も10言って10伝わる稀な人間だ。

学部卒業前に立ち上げたウェブメディアを大きくする為に奔走していた結果、彼女の存在を忘れかけていたのは否めないが、理系で今も尚東大に在籍しているAは、贔屓目なしにこの会社に必要だと思った。

そして、彼女のことを思い出した途端蘇ってきた、俺個人のAへの想い。
隠して、蓋をして、閉まっていた気持ちが思い出されてしまった。

しかし、Aを引き抜きたくて言葉にした文句は、あまりにも早急で周りにも不安感を与えたようだった。





『福良さんはAの論文、読んだ事あります?』

「あるよ。須貝さんと同じ学会で発表してたの読んだ。面白い研究してるし、まとめ方も上手だったとは思うけど…あーいうのは一般向けじゃないでしょ」

『まぁ、そうなんですけど。でも専門的な事じゃない簡単なことでも、Aは分かりやすく説明出来るんすよ。俺はそれで、あいつに音楽を教えてもらった』

「…噛み砕いた説明は確かに大事だし、そういう事ができる人材は欲しいと思うよ。だけど。伊沢が彼女に固執する理由は、個人的な感情じゃないの?」

『…それがないと言ったら嘘になるけど、でも、第一は会社の為です』

「本当にそうなら、俺から彼女に掛け合ってもいいけど」

『……。』



福良さんは、俺のAへの恋心に気付かないフリをしていて。
その上で俺が会社の為だけに彼女をスカウトするなら、俺ではなくプロデューサーの福良さんが直接彼女と話をする方が良いと持ちかけているのだろう。

俺の、個人的な感情が本当にないのであれば、だ。



……そこまで全てお見通しな訳だ。





『いや、俺が最後まで引き抜きます』

「……会社内ではその一面を見せないか、逆に見せていくかのどっちにしてね。曖昧な感じが1番面倒だから」

『はい。…忠告ありがとうございます』





たとえ福良さんだとても、Aを任せるのは嫌だと、そう思ってしまった。
始めから答えなんて1つなのに、解答権が無ければ本当の意味でクイズ王は名乗れない。

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浅間(プロフ) - 匿名さん» コメントありがとうございます〜!励みになります。更新滞らないように頑張ります…!よければ最後までお付き合い下さい! (2020年9月6日 21時) (レス) id: 2921f9dd64 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 文章も展開もとても好きです。更新を楽しみにしております…! (2020年9月6日 14時) (レス) id: bc6f6fe928 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:浅間 | 作成日時:2020年9月1日 20時

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