7.相槌 ページ15
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大学の授業がある日も無い日も、晴れた日は夕方くらいにあの屋上に行くようになった。
Aさんと会える確率は半々くらい。会える時は大抵屋上の真ん中にいるか、フェンスを背もたれにして座っている。
初めて屋上で会った日から、そろそろ2週間くらい経つだろうか。今日もまたオフィスに行く前に屋上に行く。
『あ、Aさん』
「………懲りないですね。ほんと」
『諦めの悪さは認めるよ』
僕の諦めの悪さも如実に表れているが、それと同時に、Aさんがここから本気で飛び降りようとしていないという事も顕著に表れていることに、彼女は気づいているだろうか。
『ねね、Aさんは人生に2週目があるっていう前提で今を生きるとしたら、この1週目の人生はどう生きたいって思う?』
「…なんですか急に」
『ちょっと前にオフィスでそういう話が出てね。すごく考えてたんだけど僕は答えがなかなか出なくて』
「変な事考えてるんですね」
『はは、それは自分でもそう思うよ』
人生2週目の話題が出た直後にAさんと屋上で出会ったため、少し忘れていたことだったが、またふと思い出して考えるようになった。
「…2週目があるなら、1週目は成功する人生がいいです」
『え、なんか普通逆な気がするけど』
「2週目が成功しない前提の方が、あとの人生を楽に生きれる気がするんで。1週目より良い人生を送るんだって思って生きて上手くいかなかったら、すごく辛そう」
『……なるほどね』
本当にあっさりと、Aさんはそう答えた。
深く考えて答えた感じは無いのに、すごく奥深く感じる答えに、関心してしまう。
『…じゃあさ、今生きてるこの人生が1週目で、絶対に2週目の人生があるとしたら、これからどう生きたいと思う?』
「…20数年生きた上でってことですか」
『そう』
「……なら、今すぐここから飛び降りるかな」
『え?』
「自分から身を投げる時の感覚とか、それを誰かに見られてることとか、1回体感したいなって」
『…23年で1回目の人生は諦めるってこと…?』
「そうなりますね」
どこまでも淡白で、他人の事なんて一切考えていないような発言に、少しだけ憤りを感じた。
目の前で人が飛び降りるなんて、それを止められないなんてたまったもんじゃないというのに。
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きちでーす(プロフ) - 浅間さん» この作品を読みました。スミマセン・・・これからの更新も楽しみにしています! (2020年3月31日 10時) (レス) id: dee570b2ba (このIDを非表示/違反報告)
浅間(プロフ) - きちでーすさん» コメントありがとうございます。内容の都合で本作では名前は藍で固定になってます。苗字のみ変えていただく設定ですので、ご了承ください。 (2020年3月30日 19時) (レス) id: 2921f9dd64 (このIDを非表示/違反報告)
きちでーす(プロフ) - 初コメ失礼します。名前変換をしても、設定では「藍」という名前になっているのですが・・・ (2020年3月30日 17時) (レス) id: dee570b2ba (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 浅間さん» いえいえ〜 (2020年1月16日 15時) (レス) id: 96cb70a1d2 (このIDを非表示/違反報告)
浅間(プロフ) - 鈴さん» 外していたはずなのですがいつの間に……ご指摘ありがとうございます! (2020年1月15日 20時) (レス) id: 2921f9dd64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:浅間 | 作成日時:2020年1月13日 23時