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『まだ、投身したらどんな感覚なのかって興味あるの?』
「ありますよ。別に今からフェンスを乗り越えてもいいくらい」
『それは絶対やめて、お願い』
「まぁ、誰かの顔見ながら飛び降りたくはないですよ」
『うん、そうだよ。Aさんが飛び降りたら悲しむ人がいるんだから』
「…そんな人、いるんですかね」
『いるよ、ここに』
僕は強く、本心をぶつける。
なのに彼女の目は一向に揺らがない。むしろさっきより冷たくなったような、そんな印象さえ受ける。
「私は割と本気で、この世から私がいなくなっても何も問題ないと思ってるんです」
『……どうして?』
「私に代わる人間なんてたくさんいるんです。あなたはあなただけだって、よくテレビとかで見るけど、でも実際私の代えなんて沢山いるでしょう」
『いないよ、AさんはAさんだもん。僕が話してるのは、この世でたった1人のA藍さんだから』
「…仮に私が私しかいないということは認められたとしても、私がいなくなることを否定される事が理解できない」
『なんでっ…』
「私は、至って冷静に誰にも必要とされてないと思ってるから。別に同情してほしいとか一切なく、本気でそう思ってます」
ただ静かにそう話す彼女は、遠くの空を見つめていた。
僕はその顔を見て何も言えなくなってしまった。
彼女の目に映る空の色は、僕の見る色と全然違うのだろうか?
「…今日はもう、帰ります」
『あ、あの、』
「なんですか」
『明日も、ここに来ますか?』
「……さぁ」
曖昧に目を逸らされ、彼女は屋内へと入って行った。
さっきより少しだけ日が傾いたため、屋上に1人残された僕の影も少しだけ長くなっている。
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きちでーす(プロフ) - 浅間さん» この作品を読みました。スミマセン・・・これからの更新も楽しみにしています! (2020年3月31日 10時) (レス) id: dee570b2ba (このIDを非表示/違反報告)
浅間(プロフ) - きちでーすさん» コメントありがとうございます。内容の都合で本作では名前は藍で固定になってます。苗字のみ変えていただく設定ですので、ご了承ください。 (2020年3月30日 19時) (レス) id: 2921f9dd64 (このIDを非表示/違反報告)
きちでーす(プロフ) - 初コメ失礼します。名前変換をしても、設定では「藍」という名前になっているのですが・・・ (2020年3月30日 17時) (レス) id: dee570b2ba (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 浅間さん» いえいえ〜 (2020年1月16日 15時) (レス) id: 96cb70a1d2 (このIDを非表示/違反報告)
浅間(プロフ) - 鈴さん» 外していたはずなのですがいつの間に……ご指摘ありがとうございます! (2020年1月15日 20時) (レス) id: 2921f9dd64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:浅間 | 作成日時:2020年1月13日 23時