夕焼けと憂鬱

5-2 ページ12

・


色とは光の反射によるものであるため、言ってしまえば、人の目が映した光を脳が何色か識別してその人が感じる色となる。
薄い青緑を見せられて、これは青だと言う人と緑と言う人で分かれるのは、この光の波長の判断が人それぞれで違うためだ、ということは理工学部であるためなんとなくは知っているが…



『…じゃあ。色を見ているのが好きなの？』
｢そうかもしれません｣
『すごい他人事だね』
｢なんで、山本さんは私に話しかけるんですか｣
『え？』
｢知ったところでどうもしないですけど、なんでなのかなって｣
『……そういうところじゃないかな。何にも興味無さそうなのに、屋上に足を運んでるところとか、無口そうなのに意外と会話はできる所とか。僕はAさんに興味があるみたい』
｢…理解不能ですね｣
『そう言いつつちゃんと話してくれるから。僕はもっとAさんが知りたい。そして、屋上じゃないところに場所を移せたらなって思ってる』



こんなことを前から思ってた訳では無い。今こうやってAさんと話しているうちに自分の心を整理出来て、考えながら話していたら、この言葉を伝えることがとても腑に落ちたのだ。



｢…そんな風に興味を持たれたのは初めてです｣
『そうなの？…って、普通他人にこんなこと言われないよね』
｢はい。思った以上に山本さんは不思議な人です｣
『僕からしたらAさんの方が不思議なんだけどなぁ』



そんな言葉を交わすと、少しだけAさんの表情が緩んだような気がした。そういえば、僕に対して何か感情を抱いてくれて質問をしてくれたし、感想も言ってくれた。
難しく考えず、彼女の思いを聞き出して話していけば、屋上から身を投げ出すことへの好奇心は薄れさせることが出来る気がする。

5-3→←5.行動

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す