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*
もっと早く気付いてあげれば良かった。
今の駿貴さんは本当に脆く壊れそうで胸が痛い。
すると、彼の大きな手が私の手を包んだ。
包むだけではなく、規則的にぎゅっぎゅっと握っている。
何となく、猫がクッションとかにやるフミフミに似ているな、とか思っていたら、すぐ近くに置かれていた毛布が目に入った。
『駿貴さん、最近のリモートの動画でいつも膝に毛布かけてるけど、寒がりだったっけ?』
「ん?あぁ、違うよ。昔からこの触り心地の毛布がないと上手く集中出来なくてさ」
『…あぁ、だからいつも触ってるんだ』
「そ。それから勉強しない時でも膝にかけてるけど、こいつは熱を発さないから人肌恋しくなったときめっちゃ虚しい」
『あはは、電気毛布ではないもんね』
そうなんだよ〜〜といいながら相変わらず私の手をにぎにぎしている。案外こちらもマッサージをされているようで気持ちいい。
『じゃあこれは駿貴さんの手癖なんだね』
「うん、握ってると安心する」
『愛用の毛布じゃないのに?』
「愛用の彼女だから」
『…ふーん』
でも、彼が集中したい時、私は傍にいられない。
というか、私がいたくない。彼の邪魔をしたくは無いから。
『……ちょっとだけ、毛布に嫉妬しちゃった』
「え?」
『ずっと駿貴さんに触ってもらえてる』
「…いつだって言ってくれていいって、前に言ったろ?」
『別に我慢してたわけじゃないよ、こんな世の中だし。でも画面の中でしか見られないとなると、何となく羨ましくなっちゃったの』
「毛布が?」
『毛布が』
そう言うと、駿貴さんはたまらずといった具合に吹き出した。私の肩に預けていた頭を戻し、盛大に笑っている。そんな笑われること言ったか??
「っはー…、毛布に嫉妬してるの、かわいすぎ」
『かっ、!?』
「可愛いよ、A。でもな、俺は特別を大事にしたいんだ。こうやってAに触れるのは、俺にとってご褒美みたいなもんだから」
『……特別、なの?』
「特別だよ。いや、格別の方が合ってるか?どっちにしろ俺は、Aが隣にいてくれるのが当たり前だなんて思ってない。いつだって有難いって思いたい。」
一度笑って表情が解れたのか、疲れていた顔は優しく温かいものに変わっていた。
なんだ、じゃあ嫉妬なんてしなくても良かったんだね。
私だって駿貴さんがいる日常が当たり前だなんて思ってない。
この人が隣にいる有り難さを今一度、強く感じた。
fin.
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浅間(プロフ) - いろさん» 返信が半年近く遅れてしまいすみません…!!!!コメントありがとうございました!好きと言っていただけてとても嬉しいです…。マイペースな更新で申し訳ないですが、もしよければ今後ともよろしくお願いします! (2020年7月15日 0時) (レス) id: 2921f9dd64 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 今更感すごいですがコメント失礼します!前々からすごく好きで見させていただいていたのですがとうとう好きが溢れました。好きです。失礼しました。 (2020年3月4日 21時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:浅間 | 作成日時:2019年10月24日 17時