猫背 -izw ページ31
*
テレビに出ることが多いため、姿勢には気を使っている編集長。そんな伊沢さんがとても猫背の時は、決まってオフィスのベランダにいる。
『…結局辞められてないんですね、煙草』
｢あぁ、Aちゃんか。案外辞められないもんだよ｣
ライターとしてQuizKnockに入って4ヶ月くらいの私は、月に1、2回ほど会議や相談の為にオフィスに来る。
最初に来た時は憧れの伊沢さんを目の前にして緊張しまくってたが、その時ベランダに1人出る伊沢さんを目で追ってみると、伊沢さんは煙草を吸い出したのだ。
｢Aちゃんここ入ってまだ半年経ってないっけ？｣
『あ、はい。まだ4ヶ月です』
｢そっか〜。じゃああと2ヶ月で頑張って辞めたいなぁ｣
『辞めれるんですか？』
｢見込みはないねぇ｣
ここに入る前は伊沢さんが喫煙者だなんて思っていなかった。だからこそ、このベランダで伊沢さんの猫背を見ながら2人で話す時間に、私にとっては大切な時間で。
『辞めなくてもいいと思いますよ』
｢…え？｣
『辞められてないってことは、こうやって煙草を吸ってる時間が伊沢さんに必要だからじゃないですか？』
｢なるほどね。でもそれは、実は俺のためにならない助言だってことは気づいてる？｣
『…やっぱりバレてしまいますか』
｢そりゃ、伊達にクイズ王じゃないからね｣
伊沢さんの健康を気遣うのであれば煙草なんて辞めさせるべきだ。
最初に会った時は吸い過ぎないようにしてくださいね、なんて言った気もする。
だけど、背をすぼめて申し訳なさそうに煙草を吸ってる伊沢さんの姿が、いつからか愛おしくなっていった。
あんなにも自信に満ちた表情を見せている伊沢さんはここにはいない。
それがなんとも言えない優越感を感じさせる。
『伊沢さん、猫みたいです』
｢猫？｣
『猫です。背を丸めて、寒いのに外に出て煙草吸ってるので』
｢…じゃあ、Aちゃんは飼い主なのかな｣
『え？』
｢心配して外に出てきて、俺に話しかけてくれる。相手にしない時もあるのに、構ってくれようとする｣
『…そうですね。じゃあ、ずっとお節介な飼い主します』
｢…よろしく｣
その一言は予想外ではあったが、肯定してくれたことが何よりも嬉しかった。
いくら冷たくされたって、否定されたって、私は伊沢さんを好きでいて、伊沢さんの全てを受け入れたいと、そう思った。
fin.
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浅間(プロフ) - いろさん» 返信が半年近く遅れてしまいすみません…！！！！コメントありがとうございました！好きと言っていただけてとても嬉しいです…。マイペースな更新で申し訳ないですが、もしよければ今後ともよろしくお願いします！ (2020年7月15日 0時) (
レス) id: 2921f9dd64 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 今更感すごいですがコメント失礼します！前々からすごく好きで見させていただいていたのですがとうとう好きが溢れました。好きです。失礼しました。 (2020年3月4日 21時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：浅間 | 作成日時：2019年10月24日 17時
