５ ページ6
＿
テーブルの上に置いてあった灰皿を手繰り寄せ、灰を落とす。
そしてもう一回口を付け、吸い込む。
それを数回繰り返すとどんどん煙草の先が指先に近付いて来る。
煙草を灰皿に押し付け、最後の煙を吐き出した。
もう一本を咥え、火を付けようとしたらバスルームから須貝君が出て来た。
人が来たし、やめよか。
一度は咥えた煙草をそのまま箱に戻し、音がした方を振り返った。
『おかえり。須貝君』
sgi「おう」
同じバスローブ姿の須貝君は、少し前…大学時代とは違い少し男前になっていた。
『男前になったんちゃうか？なんや、彼女でもおるんか？ｗ』
sgi「男前ってｗそんな事ないよｗ彼女も居ないし」
くだらん会話を交わした後、2人ベッドに横になる。
あ、ベッドは別やぞ？
sgi「…………」
『…………』
少しの間沈黙が流れる。
広い部屋に静寂が訪れた。
その沈黙を破ったのは須貝君の神妙な声だった。
sgi「なぁ」
その声に敢えてぶっきらぼうに返す。
『ん？』
でも須貝君は続けた。
sgi「ヒモやってたって、どゆ事」
ああ、その事か。
『あーね。いや、女の家でだらだらと過ごして男に身体売ってただけや』
sgi「えｯ…！？売ってるって……！？」
驚きなのか上半身を勢いよく起こした須貝君を横目で見ながら続ける。
『ん？ただケツ貸しただけやで』
sgi「もｯもしかして、………せｯ」
そこで声が詰まった。
ぱっと顔を見ると、照明が落ちている所為で良く見えへんかったけど、耳まで赤いのがぼんやりと分かった。
『なんや。俺のそーゆーとこ想像して恥ずかしなったか？ｗ』
須貝君の顔を指差して鼻で笑ってみる。
すると、腕で顔を覆って隠しはった。
コイツ…俺と同い年とは思えへんな。行動が初心で可愛いｗ
『ええやん。俺が幾ら男に身体売ろうと、須貝君にゃ関係のない話じゃけぇ。
わかっとるか？俺と須貝君じゃ思考回路がちゃうんや』
こう言う事……女に言って、キレられた事あった気がするなぁ。
“もう貴方だけの身体じゃない”とか頭イカれた事言われた気ぃするけど…もうアイツにゃ捨てられたんや。俺には関係あらへんし、関係あったとて聞かんしな。
俺はただのヒモじゃ。
俺に“普通の恋愛”なんて求めるなや。
『須貝君には関係あらへんよ』
そう言う。
sgi「……でも」
＿
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：モンエナ子 | 作成日時：2022年10月16日 22時
