【地縛少年】自由な君と相思相愛【花子くん】 (ページ46)

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番外編2 ページ46

初めて彼女を見たのは中学校の入学式だった。

親を連れず一人で歩く彼女の姿は堂々としていて、その場の空気だけ違うものに感じた。
風が彼女の緑がかった黒髪をさらりと揺らし、黄緑のような薄い緑のような瞳は前だけを見据えていた。

誰が見ても愛らしい顔立ちの彼女は、その場にいる人たちの視線を一身に受けながら、何事もないように校内に入っていった。

「あーまーねー？どこ見てんの？」

つかさの声で俺も我に返れば、つかさはクラスを見に行こうと強引に腕を引っ張る。
ガヤガヤと騒がしいその場で居心地の悪さを感じながらも、自分の名前を見つけた。

「あまねと離れた…。やだー！」
「つ、つかさ…。」
「俺もあまねと同じクラスがいい！」

クラスが違うと怒るつかさを何とか宥めて、教室へと連れていく。
…きっと過ごすうちにつかさも落ち着くと思う。
離れたことが少し寂しいのは、俺は言わないでおこう。

教室に入ればまだ生徒は少なく、自由席だった。当然のように窓際を取る。

「…」

話す人もいないし、窓の外へと視線を向ける。
春だなぁ…。

しばらく待てば生徒も増えた。俺の隣はまだ埋まっていない。
なんだか緊張して、視線を窓の外へと再び逃がした。

ぼんやりとしていると、なぜだか教室がザワリと沸いた。
興味がないからそちらを向かなかったが、少しうるさい。

『お隣、失礼するね。』
「あ、うん…、…！？」

自分の席の隣を見れば、先ほど外で見かけた少女だった。
え！？同じクラス？え、隣！？え！？

『私、七峰A、よろしくね。
えっと…』
「あ…、柚木普…よろしく…。」
『うん、よろしくね柚木君。』

ふわりと微笑まれ心臓が痛いくらいにはねた。

その後彼女の机の周りは人で埋まって、俺が話しかけられる隙なんかなかった。
彼女は笑顔で対応していて、質問にもきちんと答えていて、優しくて真面目な印象を受けたんだ。

担任の先生が入ってきて、生徒たちは席へと戻った時、Aさんはうるさくしてごめんねと小声で俺に謝ってきた。
彼女は何も悪くないのに。

「だいじょーぶ。」

その一言しか出なかったけど、彼女は笑ってくれた。

ああ、本当に彼女は最初から優しかったな。

「花子くん！！」
「うわっ！びっくりしたー…何ヤシロ、驚いたじゃん。」
「何度も呼んだのに反応しないんだもん。まさか目を開けながら寝てた…？」
「寝てはいないけど…、んー、思い出に浸ってた…？」

すごく綺麗な、俺の思い出に。