短編集 (ページ10)

今日:29 hit、昨日:49 hit、合計:24,843 hit

秘密ページ10

※桃さんは出てきません
※橙紫(紫橙)要素あり

※この世界線の桃赤,橙紫は付き合いません

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

side:sg

誰にだって、秘密の一つや二つ、いやもっとたくさん、誰にも言えないことがあるものだと思う。

家族にも、それ同等の友人にも、赤の他人にも、誰にも言えないこと。

もちろん俺にもそんな秘密がある。

今は言えないとかそんなんじゃなくて、本当にずっと、俺の息が絶えるその日まで、絶対に言うつもりのない俺だけの秘密。

言わば "墓場まで持っていく" というやつだ。

幸い俺は演技には長けている。

このグループの中では一番演技の仕事をいただいているであろう、というくらいには演技に力を入れていた。

だからバレるはずがないとタカをくくっていたのだ。

あいつにあんなことを言われる、あの日まで。

橙「…なぁ、しげ」

「んぁ？」

橙「好きな人おるやろ」

「へ？なに、急に…」

橙「…嘘禁止な」

唐突なことで驚いた、というのもある。

それに、じっと俺を見つめる照史の目が真剣そのものだったから、いつものようにチョケて誤魔化すことは許されなかった。

「…」

橙「メンバー」

「っ…何が言いたいん、」

全てを見透かしたようなその目は多分、本当に何もかもを知っている。

だから隠したところで意味なんてないのに、誰にも言わない、バレてはいけないと今まで生きてきた手前、簡単に肯定はできなかった。

橙「その好きな人、メンバーやろ。WESTの中の誰か」

「っ、」

橙「…やめろとは言わん。けど、もし引き返せるなら、」

「引き返すって何？」

橙「え、？」

「…自分に何が分かるん？」

我ながらえらく怖い声が出たなと思った。

でもそんな声が制御出来ずに出てしまうほど、俺はイラついていた。

何度もやめようと思った。

この感情は普通じゃないんだと、この感情は関わる誰もを傷つけてしまうと、分かっていたから。

けれどそう簡単に消せることが出来ないからこそ恋なわけで、それならば仕方ないとせめて隠し通していくことを心に決めたのに、そこへ勝手に土足で踏み込んで来て、その上「引き返せ」なんて余計なお世話だ。

俺の何が、照史に分かるねん。

「…引き返せるなら恋ちゃうねん、」

橙「っ…」

吐き捨てるように楽屋を出た。

バタンッと強気な音を立てて閉まるドアとは裏腹、俺には後悔だけが滲んでいた。