短編集 (ページ5)

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とぼとぼと二人、楽屋までの道を歩く。

普段はうざ絡みのためにスタスタと楽屋へ戻って行ってしまうしげだが、今日は幾分かスローペースで歩いており、俺もそれに合わせてゆっくりと歩く。

「…なぁ」

『ん？』

「今日、俺ん家来て」

『えっ？』

「…来て」

俺の方には目をよこさずに、真正面を向いたまま、けれど声は真っ直ぐ俺に向いているような気がする。

あの高く甘い独特な声は見る影もなく、低く落ち着いた、滑舌もはっきりとしたような、そんな話し方のしげに俺の肩は自然と上がった。

なにを、言われるんだろう。

『…わかっ、た、』

あの後特に何も無いまま雑誌撮影が終わって、しげは我先にと楽屋を後にした。

それを追いかけるように俺も出て、マネージャーさんに送迎はいらないと断りだけを告げれば、二人で同じタクシーに乗り込んだ。

しげの家は知らない。

俺も、他のメンバーも。

付き合っていた頃は知っていたが、その後引っ越したと聞いたし、今の家は知らないのに。

それなのに今こいつは、なんの躊躇いもなく俺をそこへ連れて行こうとしている。

そんなの、期待するやん、あほが。