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「…まずは、ほんまにごめん。謝るだけじゃ許されんくらい、皆に迷惑かけてもうたし、小瀧のこと傷つけてもうたけど、それでも謝りたい。ほんまにごめん」
『そんな、しげだけが悪いわけちゃうし頭上げて…?俺も感情的になって、しげが言いたくないこと問い詰めてほんまにごめん』
2人で頭を下げあって、ちょっとの沈黙が流れて、それからまたしげは「…んじゃ、話す」と目に涙をためながらも決意のついた表情で顔を上げた。
「俺があの仕事を断った理由、やんね、?」
『うん、』
「……ゲイやねん、俺」
『っえ、』
時が止まったように感じる、って、きっとこういうことを言うんだと思った。
時が止まったように感じて、『っえ、』なんてそれ以上の言葉は何も出なくて。
ふと頭で思ったのは"しげを傷つけたくない"なんてただそれだけで、でもたったそれだけの事なのに、それだけの事が邪魔をしてその続きの言葉はやっぱり出てこない。
『…、』
「…驚くよな、ごめんな、?」
しげは、苦しそうだった。
この空気にしてしまってるのは他でもない俺で、謝らなければならないのは俺の方なはずなのに、しげは謝った。
今にも零れそうな涙を目にためて、苦しそうに眉根に皺を寄せて、お世辞にもかっこいいともかわいいとも言えないその顔で、笑った。
苦しそうに、笑った。
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作者名:ゆうま | 作成日時:2023年5月1日 18時