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何も見えやしない暗闇の中に、ポツンと小瀧の姿を捉えた。
何も見えないのに小瀧だけは見えるその不気味さに、思わずサブイボがたつ。
「こ、たき、なんかここ…、おかしない、？」
『…なぁしげ』
「ん、？」
『俺、もう全部やめるわ。しげと住むのも、ジャニーズWESTも、ジャニーズも』
「は…？なん、で…」
『もう、無理』
「待って…っ、！こたきっ！」
俺の制止も虚しく、小瀧が気持ち悪く渦を巻いて、暗闇に溶け込んでいった。
ただ俺はそれを見つめていることしか出来なくて、足を動かしたくても重りでものっているかのように身体が重くて、まるで動きやしない。
かろうじて伸ばした手は悲しく空を切って、完全に消えた小瀧の姿に涙が頬を伝った。
膝から崩れ落ちる…そんな瞬間、パッと意識が一気に覚醒した。
夢。
見たこともない、今までで1番嫌な悪夢だった。
夢から覚めたというのに、未だにぼろぼろと溢れる涙は止まらなくて、冷や汗も震える手もそのまま。
「小瀧っ…、」
無性に怖くなって、今小瀧はどこにいて何をしているのか、そんなのも気にせずに着信ボタンを押した。
今までこれを躊躇っていたのが嘘かのようにスムーズに。
『もしもし？どした？』
「っ…、」
『…しげ？』
3コールもしない内に小瀧は出た。
それがひどく安心して、今度は嬉しい方で涙が止まらなくなって、漏れ出る嗚咽も抑えることができなかった。
それはもう、喋れないほどに。
『俺、ちょうどさっき東京着いたんやけど…』
「っ、ん…、こ、たきっ…」
『……待ってて、すぐ行く』
ブチッと通話が切れて、悲しそうに携帯がないた。
続けて届いたメッセージには『さんじゅっぷんくらい』とだけ書いてあって、主語も変換の時間さえも惜しんだのであろうそのメッセージが、とてつもなく愛おしかった。
滲む視界の中で必死に「ありがとう」と送れば、なんだかなんともとれない不思議なスタンプが届いて、さっきまでの涙が嘘かのように笑みがこぼれる。
俺はこいつがいなかったら、今頃どうなっていたのだろう。
多分俺はもう、こいつ無しでは生きられない。
甘えられる場を、気の抜ける場を知ってしまった俺はもう元には戻りたくなくて、戻れなくて、手放したくなくて、手放せなくて。
小瀧のいない世界ならば、生きたくないとまで、思えてしまった。
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作者名：ゆうま | 作成日時：2023年5月1日 18時
