短編集 (ページ24)

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『おじゃましまーす』

「んー」

『なぁ、もうそろそろただいまでええんちゃう？俺もうこれで連続何日目やねん』

「知らんよ、俺はええ言うたんにお前が帰らんねやんか」

『そら心配やもん』

あれから小瀧は、次の日がオフの時、次の日が自分家よりも俺ん家からの方が近い現場の時、次の日が俺と同じ現場の時は俺の家に泊まるようになった。

まぁつまり、ほぼ毎日俺の家にいる。

正直助かってはいる。

実際小瀧がいる日は毎日よく眠れるし、元々気を使わない相手だから、家に帰って来た時に小瀧がいようがなんの不自由もない。

だけど少しだけ、なんだかこう、モヤモヤ、というか、体験したことのない不思議な気分になることがある。

『明日ドラマ撮影やっけ？』

「うん」

『頑張ってな。俺オフやし、帰って来るまでに準備しとくわ』

そう言ってドヤ顔混じりに両手を広げる小瀧に、「きっしょ」と返した。

あまりの疲労に精神的に参ってしまった日、人は人の温もりを求めるらしい、俺の経験上。

この生活を始めてすぐに、家に帰ったら人がいる、しかもそれが小瀧だということに安心しすぎて、衝動的に小瀧に抱きついてしまったことが1度だけあった。

それからというもの、俺がドラマや映画の撮影だった日は、帰って来たらハグをするというのが日課になっていた。

小瀧とハグをすると、疲労が軽減されるだけじゃなくて、俺の中の何かが満たされていくような感覚がする。

それでいて小瀧も嫌がらないし、むしろこうして乗り気であるからやめられなかった。