・ ページ20
『しげ、』
「ん、？」
『しげ、起きて。時間やで』
「んん…、…めっちゃねてもた、」
『おはよう。あと10分やってさ』
「ん、ありがと、」
「おはよ、」と遅れて挨拶を返せば、小瀧は優しく笑った。
今日もまた、こいつの隣で気持ちよく眠りこけてしまった。
夢を見ないほどの深い眠りに、身体の疲労も精神の疲労も幾分か和らいだ気がする。
俺こいつがおらんかったら今頃過労で死んでんちゃうかって、ふとそう思ってしまうほどに、こいつの隣でだけはよく寝れる。
「…俺がドラマできてんの、小瀧のおかげやな」
『え？俺なんもしてへんけど』
「んなことない。お前がおって助かってんねん、俺」
『ふはw なんや、急に。照れるやん』
顔を赤くしてデレデレに溶けた笑顔を見せる小瀧だけど、やっぱり心当たりがないというように『けどほんまに、なんもしてへんで？』なんて不思議そうな顔をする。
こいつが毎日でも隣にいたら俺がどれほど助かるか、こいつは知らない。
「…こんなこと言うても困らすかもしれんけどさ」
『うん？』
「俺、ドラマ始まると寝れへんねん」
『え、』
「撮影は楽しいし仕事貰えるのも嬉しいけど、プレッシャーとかなんか色々考えることもあるねんな。そんなん考え始めると全然寝られへんくて、寝れたとしても悪い夢見てすぐ目ぇ覚めるし、しょーみ疲れとか1ミリも取れへん」
『っそんなん聞いてへん、』
「うん、言うたことないよ。小瀧だけやなくて、誰にも言うたことない」
「やってこんなん言うてもどうすんねんって話やんか」と言えば、『それはそうやけど…』と小瀧が悔しそうに呟く。
小瀧の言いたいことは、何となく分かる。
どうするのか為す術すら分からなくても頼って欲しいと、そんな顔をしている。
けどさ、お前が望むよりは遅いかもしれんけど、ちゃんと俺なりにお前に頼ろうとしてんねんで。
小瀧だけは、頼りにしてるって、分かってもらえるかな。
「けどさ、小瀧」
『うん』
「俺今日、めっちゃよう寝てたと思わん？」
『あぁ、たしかに。顔色もちょっとようなったな』
「ははw せやろ？」
俺の顔を覗き込んだ小瀧はすごくホッとしたような顔をしていて、それだけでも疲れが飛んでいってしまうような、そんな感覚に包まれる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 153人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆうま | 作成日時：2023年5月1日 18時
