短編集 (ページ13)

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君の創る世界ページ13

side:kt

しげの創り出す世界観が、俺は大好きだ。

意味不明なボケとかツッコミとか、一癖ある言い回しの歌詞だとか。

"しげらしい" と感じるもの全てが俺には愛おしく感じて、その全てをどうしようもなく守り抜きたいと思ってしまう。

「分からんなってもうたなぁ…」

『ん？』

テレビ誌の取材待ち中、隣でパソコンをカタカタとしていたしげがふと呟いた。

隣の俺にすら聞こえるか聞こえないか、そんな声量の呟きは多分意図せずに出たひとりごと。

拾うべきか否か迷いはしたけれど、悩んでいるであろうしげを放ってはおけない過保護な俺は、普通に返事をしてしまった。

「あー、いや、ごめん」

『全然。どしたん？歌詞？』

「うん」

チラッと覗いたパソコンの画面には文字がいっぱい並んでいて、しげの手元には様々な表現が箇条書きされたメモがあった。

「恋愛系作りたいんやけどさぁ、俺恋愛とかまともにしてこんかったから分からんねんな、」

「んー…」なんて口を尖らせながら天を仰ぐその姿は、なんだか有名アーティストのようで笑ってしまう。

「なんわろてんねん、バカにすんなや」なんて反抗してくるしげの表情は、言葉に反して優しい。

「恋愛マスターの小瀧さんにこの悩みは分かりませんでしょうね〜」

『ふはw ひさびさやなぁ、その呼ばれ方』

「………小瀧はさ、どんな恋愛してきた？」

『え？』

「なんかどうしてもドラマみたいになってまうっていうか…。夢物語みたいでしっくり来んくて、実体験聞きたいねん」

「小瀧のリアルな恋愛は、どんなんやったん？」なんて首を傾げるこいつは、何も分かっていない。

夢物語だったってなんだっていい、と俺は思う。

実際に存在した物語も、実際には存在しない物語も、しげの創った世界は、しげの創った世界ゆえの魅力がある。

けれどそこには、しげの "創りたい" という想いが伴わなきゃ意味が無い。