01.ストーカー ページ1
〆．
こつ、こつ、こつ……
街灯の光だけが頼りの住宅街に、私のともう一つの足音が響く。
それは私を追い抜くことも途切れることもなく、同じペースで同じ方向へ向かっている。
空が真っ暗なのは、吐く息が白い理由と同じ。
それに今日は大学の講義が五限まであったから、しかたない。
本当はお店が連なる明るい道を通って帰ることも出来るんだけど、人通りの少ないこっちの道のが近道なんだ。
ああ、寒いな。
ちょうど自販機があるから、立ち止まって何を買おうか悩む。
後ろにいた足音もピタリと止まった。
なんだか可笑しくて、ちょっと口角が上がる。
ガタン、無機質な音を立てて落ちてきたココアの缶を開けて、一口。
温かさが体中に染み渡った。
晩ご飯はシチューにしよう。
歩き出すと、足音もついてくる。
まあストーカーなんだけど。
でも全然こわくないよ。
だってストーカーの正体は……。
「あ、」
目の前を歩いていた男の人が、ポケットからハンカチを落とした。
男の人がハンカチ持ってるってなかなか好印象だよね。
拾おうと腰を屈めると、後ろから何かが凄い勢いでハンカチをかっさらい、男の人に手渡した。
男の人に軽く会釈をして、"何か"が私に向き直る。
「あれ、偶然だね、大毅くん」
「………………ん」
ストーカーの正体は、私の彼氏の重岡大毅くんだ。
「ココア、飲む？」
「飲む！」
間接キス〜と嬉しそうな彼は、彼氏であるにも関わらず、私のストーカーをしている。
理由はわからないけど。
何にせよ、彼の行動の全ては私への愛情に基づくものらしい。
例えば今、私がハンカチを拾おうとした瞬間に彼がかっさらっていったのは、
私が男の人のハンカチに触れるのを防ぐためだった。
彼は独占欲が強い。
私が彼以外に触れるのを極端に嫌がる。
「大毅くん、良かったらうちでご飯食べていく？」
「やったー！ええの！？」
「いいよ、もうすぐそこだし」
「A好きー！！」
正面から抱き締めてきた。
私よりも大きくて、私よりも冷えてしまっている体。
温めてあげなくちゃ。
「私と晩ご飯、どっち先に食べる？」
「えっ！？」
顔を真っ赤にして、「それはずるいやろ…」と呟いた。
「冗談、はやく帰ろ」
繋いだ手は、やっぱり冷え切っていた。
〆．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2068人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
恋音(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!もう、ハラハラドキドキでした！(笑)anotherstoryもみてみたいなぁ…なんて思っていまして…。(笑)これからも頑張ってください!! (2018年8月14日 11時) (
レス) id: 719aff63d3 (このIDを非表示/違反報告)
有岡毅菜/ありきな(プロフ) - 完結おめでとうございます！！ほんまにこの小説、作者様のファンでした！（笑）終わってしまうのがほんまに名残惜しいです（涙）しげちゃんのへの私の愛がより一層深まりました！こんな素敵な小説を書いてくださりありがとうございました！これからも頑張って下さい！ (2018年5月7日 21時) (レス) id: 307b6fc2e6 (このIDを非表示/違反報告)
優衣(プロフ) - この作品好きでした！重岡くんと狂愛の組み合わせが最高に良くて、最後の心中も私の中ではスッキリした終わり方で満足です！完結お疲れ様でした (2018年5月7日 0時) (レス) id: 53d8d3bdbc (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - 完結おめでとうございます！バットエンドのようなしかし、二人にとってはメリーバットエンドな展開最高でした！！ 第三者目線のアフターストーリーも見て見たいなあと個人的に思います(*'▽')笑 これからも素敵な作品を楽しみにしています応援していますね！ (2018年5月6日 20時) (レス) id: 289b961369 (このIDを非表示/違反報告)
詩織(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます(*´-`) 重岡くんと狂愛というイメージがマッチしすぎていて、この作品が本当に大好きです。話を読み進める手が止まりません。お忙しいとは思いますが、これからも無理せず更新を続けてください(*´-`)/！応援しています！ (2018年1月16日 23時) (レス) id: c157ef172e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はゆな
| 作成日時：2017年11月1日 0時
