69.合宿スタートの話 ページ23
夏休み中基本的に学校は閉まっている。部活動がある日を除き、ほとんど人がいることは無い。しかし、今日から二日間だけは違う。ジリジリと肌が焼かれているのを感じながらもんを通過した。開いていたということは、もう来ている人がいるんだろう。
｢……私は応接室か｣
下駄箱の中に入っていた紙には、応接室と書かれていた。開催場所も当日にこうした形で知らされるとは、何か試されているように感じる。応接室の扉の前、数日ぶりに見るその人に思わず駆け出していた。
｢雲雀さんっ！｣
｢ああ、来たね。君は僕が見るから、来たならさっさと始めるよ｣
｢も、もうですか！？｣
もう少し久しぶりの再開に浸っていたいのに、そう思っているのは私だけらしい。応接室の中に荷物を置き、手ぶらでまた外へ向かう。先を行く雲雀さんを見て、自分の来ているワンピースを見下ろした。
別に何か言われたかった訳ではないのに、何でこんなに悲しいんだろう。何でこんなに、寂しいって感じて……
｢A｣
｢え、あ、はい。何でしょうか｣
名前で呼ばれて動揺してしまった。そうやって呼ばれたのは、いつぶりだろう。名前を呼ばれただけなのに、嬉しくて堪らない。久しぶりに会えただけでも嬉しいのに、名前まで。
｢それ、いつもそうなの｣
｢それ？｣
｢普段は髪も結ばないでしょ｣
｢ああ、この格好のことですか？確かにいつもは違いますが、雲雀さんに会うのですから身なりを整えないと。髪は、暑くて私が耐えられず……すみません｣
もしかして気に入らなかったのかもしれないと思うと、口が勝手に謝っていた。雲雀さんがムッとするものだから、更に私は縮こまる。ああ、申し訳ない。私は何をやっても、やっぱりうまくいかない。すみません、もう一度そう言おうとした。
｢僕が指導するからには、その卑屈な考え方を二度とできなくさせてやる｣
｢ひぃ！ああ、あ、ありがとう御座いますぅっ！｣
喜べばいいのか怯えればいいのか分からない。学校から飛び出して、一体私はどこへ向かわされているんだろう。草壁さんは他の風紀委員の指導だろうから、私と雲雀さん、二日間のマンツーマンだ。
｢それと｣
｢はい……｣
｢似合ってる｣
｢え｣
今、今のは雲雀さんの声だった。間違えるわけもない、今確かに雲雀さんは"似合ってる"と。雲雀さんが、私に。
｢何止まってんの、置いてくよ｣
｢え、あ、あう、え｣
嬉しくて嬉しくて、死んでしまいそうだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 127人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「リボーン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
無気力boy(プロフ) - 初コメ失礼します。いつも楽しみに見てる者です……！これからも楽しみにしています( ´▽｀) (2019年4月20日 19時) (
レス) id: 947057a2b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まどろみ | 作成日時：2019年3月18日 23時
