＊ ページ42
「これを渡してしもうたら、聖女さんがここから居なくなってしまうような気がするんよ。…そんなん嫌や。もう、元の世界になんて戻してやりとうない」
『別に私はどこにも行かない。だからこの手を離して』
「嫌や。絶対嫌や………」
『離して』
「………絶対離さん」
彼の背後で偽茶番ちゃんが笑っている。
あぁ彼女の仕業か、なんて考えながら私は困ったようにゾムを見つめた。
彼に悪気は無いのだろう。多分私に居なくなって欲しくないというのは彼の本心だ。それを彼女に上手く利用されてしまっている。
どうにかするには、一瞬でもいいから彼を正気に戻してあげないといけない。
…………………そうするには、どうすれば…？
「なぁ、戻ろうや。やっぱりあかんよ、ここにおるんは。部屋に帰ろうや、なぁ」
こんな時、小説の主人公たちはどうしていた？漫画のヒロインは？どうすることが一番の最適解なんだ…？
分からない。私には、きっと。
『……自分のこと、頼ってくれって言ったじゃんか』
…駄目だ。意地の悪い私では、ヒロインみたいに優しい言葉はかけられない。
きっと私に、最適解は導き出せない。どんなに立場が変わったって、どんなに容姿が綺麗になったって、中身はちっとも変わらないんだから。
『嘘つき』
ほら、全然可愛くない。
何がヒロインだ。何が聖女だ。こんなの、ただのわがまま娘じゃあないか。
『そんなこと言うならもう二度と頼らない。頼っても助けてくれないなら、もう1人で頑張る。嘘つき。嫌い。』
「―――っ、」
彼の顔がつらそうに歪む。
彼の力が弱まった隙に、私はその手を振りほどいて逃げだした。
彼が追いかけてくる様子はない。
がむしゃらに走って1つの本棚の陰に隠れると、私は再び本の鎖に手をかけた。
『――――《
聖女だけが使える唯一の魔法。それを唱えた途端、今は間でビクともしなかった太い鎖がみるみると錆び付いていく。
ピシッと言う鈍い音と共に、鎖にひび割れが拡がっていき、最後には塵となって消えていった。
鈴の音が聞こえる。
恐ろしくうるさい鈴の音。
咎めるように響き渡る鈴の音は、今まで聞いた中で最もうるさく耳障りで、頭に響いた。
「―――ゆるさない」
「ありがとう、A」
同じ声が重なる。
美しい光に包まれながら、茶番ちゃんが飛び出してきた。
「さぁ！反撃の時間だよ！！！！」
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マーシャ(プロフ) - Raiさん» ありがとうございます！遅くなってすみません！がんばりまーす！ (2020年2月16日 17時) (
レス) id: cf5983d7fe (このIDを非表示/違反報告)
Rai(プロフ) - 更新再開ｯｯ.......！？嬉しいです！！待ってました！！これから、自分のペースで頑張ってってください！！応援してます！ (2020年2月16日 16時) (レス) id: f599ba319e (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - 俺氏さん» ありがとうございます！とても嬉しいです…！全然更新できなくてホントに申し訳ないんですけど、できる時にするつもりですので！応援ありがとうございます…！ (2020年1月10日 10時) (レス) id: 942f8fba2e (このIDを非表示/違反報告)
俺氏 - 神話が…此処に神話があったー！！とてもタイプで面白いです！受験応援しています。何時までも待っています！！！ (2020年1月2日 22時) (レス) id: 1c5d8ffce1 (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - Yukiさん» ありがとうございます！受験が終わったらまた更新再開しますね！頑張ります！ (2019年12月29日 10時) (レス) id: 942f8fba2e (このIDを非表示/違反報告)
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