＊ ページ8
「…は？」
一瞬、目に見えてチーノが動揺の色を表した。ぐらりとレンズ越しに瞳が揺れ、しかしすぐ誤魔化すように怪しく細まる。ゆったりと口角を上げた彼は、バカにしたように私を見下ろして、ハッと小さく息をついた。
「何、今更そんなこと言うて気ぃ引こうって？無駄やで。やってその感じからしてどうせおねーさんか例のオトモダチが持ってんねんやろ？なら殺して奪えばええ話」
『い、つ私が、っ…持ってるなんて、言ったわけ？…っ、残念だけど、私は一個も持って、ない、よ』
「ふーん？じゃあオトモダチが持っとるんやろ？」
『ちがうよ』
だんだん口を開くのも億劫になってくる。そういえばどんなゲームでも出血が長く続けば体力がなくなってゲームオーバーだったっけ。どれだけ長く生きようとしても、結局は死ぬしかないというのか。あーあ。なんて無様なんだろう。
傷口が疼いて苦しい。痛くて、痛くて、痛くて。指先の感覚も怪しくなってくるなんて、これは本格的にまずいだろうか。
死にたくない。まだやりたいこと、いっぱいあったのに。
「………っ、くそっ」
目の前でチーノが何かを言っている。だけどもうそんなの興味無い。だってどうせ死ぬんだから。
頬に暖かい何かが伝って、瞼がゆっくりと閉じていく。あぁ、このゲームの事故に巻き込まれて、私は一体何度泣いたのだろう。優しく涙を拭ってくれるお母さんが懐かしい。
会いたい、会いたいよ。寂しいよ、怖いよ。
お母さん、私死にたくない。ねぇ、助けてよ。
視界が霞む。チーノの姿ももうろくに認識できない。
眠くて、身体中が痛くて。
そして私は、そっと意識を失った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1148人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
m(プロフ) - 久しぶりに読んだらまたハマってしまいました！！ (10月27日 3時) (
レス) @page14 id: 5ed95a932c (このIDを非表示/違反報告)
ラテ。(プロフ) - 更新お疲れ様です。相変わらず物語がかっこよく言い回しも素敵で何度読んでもドキドキとワクワクを味わえる素敵な作品です。次の更新を楽しみにしています。 (2022年5月9日 16時) (レス) @page14 id: ea61eec359 (このIDを非表示/違反報告)
Roin(プロフ) - 更新嬉しいです！！お疲れ様です！ (2022年5月8日 19時) (レス) @page14 id: e30e1010c9 (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - たくさんのコメントありがとうございます！更新遅くなって申し訳ありません。待っていてくださって本当に感謝してます！ (2022年5月8日 17時) (レス) id: 3b18e92123 (このIDを非表示/違反報告)
さくま巳兎(プロフ) - はじめまして。この作品すごく面白く見入ってしまい、何度も読んでしまいました！これからも応援しています！ (2022年4月12日 20時) (レス) @page11 id: 6464a1c376 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
