懇篤の青年 ページ1
黒狼洞窟に到着したA達を出迎えたのは、辺り一面にひれ伏す大量の遺体だった。
ほとんどが喉笛を鋭い刃物のようなものでかっ切られており、どう見たって既に亡くなっている。
息を飲む2人を他所に、あぁこれはきっとあの男が殺ったのだろうな、とどこか人事のように私は考えていた。
「なんや、これ…」
「ワシらより先に誰か来とったみたいやな」
遺体を踏みつけないように足元に注意しながら洞窟の奥に進めば、祭壇のようなものが見えてくる。よく見ればあのコンビニの中にあったような小さな箱がその祭壇に鎮座しており、しかし中は空っぽで、もう既に中身は持ち去られたあとだということが容易に理解できた。
私と同じくあの箱を見た事があるシャオロンはその事実に気が付き忌々しげに舌を打つ。もう取られた後やったか、とどこか悔しげに呟いた。
「完全に無駄足なったやんけ……どないするん」
「どうもこうもあらへん。イベント終わったあとならもうここには用はない。先進むで」
「行く宛てあるん」
「……まぁ一応」
特に洞窟内を探索するでもなく、2人はすぐに踵を返し始める。こういう切り替えのいい所は正直私もちょっぴり好感をもてたりするな、なんて。ただ、NPCとはいえ、人の遺体を遠慮なく踏み付けるその様子だけは正直少しいただけない、と心の中で思った。もちろん思うだけで口にはしないけれども。
ロボロにナビを頼みながら私たちは森を抜け―――今回私は迷子にならないようにシャオロンに手を引かれながら―――人気のない寂れた商店街のような場所にやってきた。
ゲーム内だからか食べ物が腐っている様子もなく、衣服や生活用品も一通り揃っている商店街。どうやら自分たち以外の人はいないようだと気がつけば、嫌でも気は抜けるものである。
隣で手を引くシャオロンも、少しだけ口元が緩んでいた。……いや、前言撤回。彼はいつも笑っている気もする。
「とりあえずここの探索しようや。なんかあるかもしれへん」
「A、あんま遠く行くなや？万が一誰か来た時は俺呼べ。呼べへんかったらハンドガンで殺せ。ええな？」
『そ、れは…』
「ええな？」
『……うん』
空はもう暗くなり始め、該当のうっすらとした明かりだけが頼りになる時間。こんな時間に探索するなんて、と思わないこともないが、私が彼らに逆らえるはずもなく、渋々私は首肯した。
☪︎ *.
続編です
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m(プロフ) - 久しぶりに読んだらまたハマってしまいました！！ (10月27日 3時) (
レス) @page14 id: 5ed95a932c (このIDを非表示/違反報告)
ラテ。(プロフ) - 更新お疲れ様です。相変わらず物語がかっこよく言い回しも素敵で何度読んでもドキドキとワクワクを味わえる素敵な作品です。次の更新を楽しみにしています。 (2022年5月9日 16時) (レス) @page14 id: ea61eec359 (このIDを非表示/違反報告)
Roin(プロフ) - 更新嬉しいです！！お疲れ様です！ (2022年5月8日 19時) (レス) @page14 id: e30e1010c9 (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - たくさんのコメントありがとうございます！更新遅くなって申し訳ありません。待っていてくださって本当に感謝してます！ (2022年5月8日 17時) (レス) id: 3b18e92123 (このIDを非表示/違反報告)
さくま巳兎(プロフ) - はじめまして。この作品すごく面白く見入ってしまい、何度も読んでしまいました！これからも応援しています！ (2022年4月12日 20時) (レス) @page11 id: 6464a1c376 (このIDを非表示/違反報告)
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