＊ ページ14
**
―――生にしがみつくような悲鳴が心地いい。
シャオロンは、大きなシャベルを振り回しながら不意にそう思う。
取り繕ったような猫なで声でも、嘘にまみれた醜い声でも、相手を卑下するような耳障りな声でもない、嘘偽りない本音を乗せた心からの声。
それを聞く度にどこか気分が高揚し、快感が身体中を駆け巡るような感覚がするのだ。
元の世界の彼はただの会社員。
しかしここでは無慈悲なサバイバー。
泣きわめく人には容赦なく刃を突きつけ、逃げ惑う人には特大のスイングをお見舞する。
正真正銘の、殺戮者。
「…あはっ」
―――笑みが、零れた。
*
コンビニに躊躇いなく入店した彼は、すぐに一人の男と接敵した。
強靭な肉体を持つ男性のアバター。
服装はゲーム開始時と変わらぬ初期装備であったが、体格だけ見るとまるで歴戦の戦士のような風貌。それにはさすがのシャオロンも思わず感嘆した。
ギョロりとした鋭い目がシャオロンを射抜き、不敵に煌めく。
細身のシャオロンを舐めまわすように見つめていたその目は、嘲笑うかのように細められた。
「…なんだ、ただの弱っちい餓鬼か。誰が乗り込んできたのかと思えば。警戒して損したぜ。…あー、でも
大ぶりのナイフをシャオロンに突きつけて、彼は下品に笑う。
その声を聞き付けたのか、店の奥からまた3人の男が姿を現した。
全員手には武器を持ち、その体はプロレスラーのように大きい。
シャオロンより頭一つ大きい彼らが、にやけた顔をしながらシャオロンを取り囲んだ。
「…嫌や、って言うたらどうするん？」
「そりゃあ死んでもらうしかねぇよなぁ？」
「死にたくなけりゃその手に持ってるシャベル置いておうちに帰んな」
「お家になんて帰れるわけねぇだろ！俺らはゲームにクリアしねぇとここから出られないんだぜ？」
「あっははは！！違ぇねぇ！！」
…
彼らは気が付かない。
シャオロンの衣服に染み付く強い血液の香りに。
彼らは気が付かない。
俯いたシャオロンの口元が、酷く愉快げに歪んでいることに。
彼らは気が付かない。
シャオロンは、この場にいる誰よりも
…
「…………邪魔やねん、お前ら」
琥珀の青年が、牙を剥く。
男の脳天に、鋭い刃が突き刺さった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1114人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ごはん - 2度目のコメント失礼します!!!今日見たら続編が出ていてとても嬉しい気持ちになりました！！続編の方でも自分のペースで頑張って下さいね!!!楽しみです〜！！ (2021年7月10日 2時) (
レス) id: 7774cb1cfe (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - 狐火さん» ありがとうございます！そう言っていただけると嬉しいです！これからも頑張りますねー！ (2021年7月9日 21時) (レス) id: 7b4b293a35 (このIDを非表示/違反報告)
狐火(プロフ) - 続編おめでとうございます！続編に移ってもずっと応援し続けますので、更新、待ってます！！少しずつ依存し始めてる夢主…良いですね（） (2021年7月9日 21時) (レス) id: a78dc8dbc5 (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - bhさん» 更新お待たせしてすみません。そう言っていただけるなんて本当に嬉しいです！ありがとうございます！これからも頑張りますねー！ (2021年7月9日 19時) (レス) id: 7b4b293a35 (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - ごはんさん» わー！そう言っていただけるなんて光栄です！ありがとうございます！これからも頑張りますー！ (2021年7月9日 19時) (レス) id: 7b4b293a35 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
