思い出カメラ【ht】 ページ2
「今、田舎者って思ったでしょ」
『そんなこと思ってないってば』
鳥の声がする。耳を澄ませば川の流れる音だってするし、なんなら時々狸のような影だって見える。視界の中に広がるのは1面の緑だけで、高いビルやマンションの姿なんてひとつもない。
手に持ったカメラの中にその自然豊かな美しい風景を収めれば、なんだか心が少しだけ洗われたような気分になった。
そんな私の様子を、隣の彼はどこか不機嫌そうな眼差しで見つめている。何が不満なんだと視線を向ければ、彼は小さくため息をついた。
「…別にわざわざこんな田舎に来なくてもさぁ」
『だってここ、ひとらんくんの故郷なんでしょ？1度は来てみたいに決まってるじゃない』
「…ふーん。でもつまんないでしょ、ここ」
『そんなことない！空気も美味しいし、景色もとっても綺麗だし。すごく素敵なところだよ？』
「…別に、そんなことないよ」
そう言うひとらんくんはどこか嬉しそうだ。
おやおや、なんて顔を覗き込めば、照れくさそうに目隠しをされてしまったけれど。
スカートの裾を持ち上げて、少し草の伸びている道をたどたどしく進む。すると都会では滅多に見られないような広い田んぼが姿を現した。
風に吹かれて緑色がゆらゆら波を描いている。
もう一度カメラのシャッターを切れば、私の隣からもカメラのシャッターを切る音がした。
『…ひとらんくん？』
「んー？」
『今何撮ったの？』
「可愛い彼女の横顔」
『………ばぁか』
ひとらんくんの肩を思い切り叩く。大袈裟に痛がってみせる彼の姿をカメラに収めれば、ひょいとカメラを取り上げられた。
そのまま逃げ出す彼の背を追いかけて、少し足場の悪い道を全速力で駆け回る。
近くで座り込んでいた野良猫が、そんな私たちの様子をじっと静かに見守っていた。
私のカメラにフォルダには、君の笑顔が溢れてる。
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マーシャ(プロフ) - bhさん» ありがとうございます！あの話私もお気に入りだったので褒めていただけて嬉しいです！ (2020年8月17日 21時) (
レス) id: cf5983d7fe (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 最新話のci助教の話信じられないくらい好きです。胸が締め付けられました。ありがとうございました。 (2020年8月17日 0時) (レス) id: 204dfe46bb (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - イリアさん» 返信遅くなってすみません！ありがとうございます！嬉しいです…！ (2020年8月6日 8時) (レス) id: cf5983d7fe (このIDを非表示/違反報告)
イリア - やべーめっちゃすごい(語彙力) (2020年8月3日 10時) (レス) id: f0aa5ac6be (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - 闇ちょこさん» リクエスト了解です！ありがとうございます！そう言って貰えると本当に嬉しいです！更新頑張りますね！ありがとうございます！ (2020年5月21日 15時) (レス) id: cf5983d7fe (このIDを非表示/違反報告)
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