＊ ページ9
*
「おーい、早う来いって！帰らんの？置いてくでー」
『ちょっと待ってー』
夕暮れの空は明るくて美しい。
パタパタと帰り支度を済ませた私は、友人たちに手を振りながら慌てて教室を出た。
扉の外で待っていたのは私の大好きな幼馴染で。
私を見てへらりと笑うと、いつものように肩を並べて校門を出た。
「それで、シッマがハゲに叩き起されて…」
『うっわ痛そう。でもそれじゃシッマ起きなかったやろ』
「爆睡やったで。」
『せやろなぁ』
朝の速報が本当なのかと疑うほどにいつも通りの彼。
生き生きとした表情で語る彼を見ていると、私は不意に寂しい気持ちになってしまった。
『……明日からは、別々に帰らなあかんね』
「…え？」
ぽつりと私の口から出た言葉。
それを聞いた彼は、大きく目を見開いて驚きを露わにしていた。
彼の対応を見ていて、彼がマドンナの告白を振ったのかとも考えた。
…しかし、その考えは彼のバッグを見た時に霧散する。
彼のバッグには可愛らしいポメラニアンのキーホルダー。
確かあれは有名な遊園地でしか手に入らないペア物だったはずだ。
昨日まではなかったそれを付けているということは、きっと彼女からもらったプレゼントだということ。
「…なんで、」
『なんでって、彼女さんに申し訳ないじゃん』
それならば、たとえ幼馴染とはいえ、他の女が四六時中一緒にいるわけにはいかないだろう。
ほんの少し泣きそうになるのを堪えて小さく俯く。
今はあまり彼の顔が見たくなかった。
「…なんやねん。それ」
怒りを押し殺したような声が上から聞こえ、私は一瞬困惑する。
なぜ怒っているのだろうと顔を上げると、彼にぐっと後頭部を抑えられ、強引に唇を重ねられた。
『…っ！？』
直ぐに離れる口付けに、私は大きく目を見開く。
彼はほんのり頬を赤らめながら、拗ねたように唇をとがらせた。
「あいつの事は振ったわ。勘違いせんといて」
綺麗な黄金色が私を見つめ、思わず見惚れる。
どこか楽しげに口角を上げた彼は、煽るようにこう告げた。
「俺はずっと昔から、お前のことしか見てへんわ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 889人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マーシャ(プロフ) - めるさん» 基本的にここにあげてるお話はツイッターで上げていたお話なので更新速度かとてつもない速さになってます笑。内容はフォロワーさんなどにリクエストとかいただいて書いてます！ (2019年9月20日 20時) (
レス) id: cf5983d7fe (このIDを非表示/違反報告)
める(プロフ) - 更新スピードの速さにびっくりしています…！お話のネタってどうやって考えているのですか？ (2019年9月20日 17時) (レス) id: 00dabe47f6 (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - 名無しさん» ひょえ、ありがとうございます…！微妙なところで終わったので、気が向いたら続き書こうかな、と思ってます。 (2019年9月18日 23時) (レス) id: 942f8fba2e (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 猫の日の話がとても好きです (2019年9月18日 21時) (レス) id: 8e5d693f3e (このIDを非表示/違反報告)
ねおる(プロフ) - マーシャさん» そうなんですね・・・ (2019年9月17日 20時) (レス) id: 0c3e920e49 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
