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ページ37

「…あれ、あんた何しとんの?」
『…え?』

今まで開くことのなかった窓が音を立てて砕け散った。
ガラスの破片が太陽の光を反射してキラキラと輝く。
きらびやかな光に包まれてこの部屋に来訪したのは、緑色の服を身にまとった若い男の人だった。

『…だれ?』
「それはこっちのセリフやわ。こんな所に女がいるなんて聞いてへんぞ」

若草色の瞳が私を捕える。


…なんで?おば様はこの世界には私たちしかいないって言っていたじゃない。
みんな、とっくの昔に死んじゃったんだって。そう言っていたじゃない。


なのに、なんで人が生きてるの?


金髪の私と黒髪のおば様。
茶色の髪の毛の人なんて見た事がなくて好奇心から思わず手を伸ばす。
不思議そうに首を傾げるその人に、私はそっと微笑みかけた。

『…貴方の瞳は、綺麗な色をしているのね。』
「え?」
『この髪の毛も素敵。茶色の髪の毛なんて初めて見たわ。この服、とっても動きやすそうね。』

もっと近くで。もっとよく見せて。
好奇心に抗えず近づくと彼は途端に頬をあからめる。
それを無視して彼の頬に手を当てると、熱を帯びた彼の瞳と私の視線が交差した。

「……あんた、名前は?」
『……名前………』
「俺はゾム。あんたは?」
『………わかん、ない。おば様にはAって、呼ばれてる。』
「A…ええ名前やね」

ゾムは小さくつぶやくと私を抱き上げる。
私が何を言うよりも早く、彼は割れた窓からその身を投げた。

体が浮きあがるかのような感覚に私は思わず悲鳴をあげる。
ケラケラと笑ったゾムは、そんな私に小さく口付けを落とした。

『なっ…?』
「なぁ、A」

耳元で聴こえる優しい声。
思わず視線を上にあげると、形のいい唇が静かに動いた。

「俺、あんたに一目惚れしてもうたわ。今からあんたを誘拐するから、ちょっとだけ眠っといてな。」

次の瞬間、ゆっくり落ちていく意識。

優しく私の意識を刈り取ったゾムは、眠ろうとする私にもう一度だけキスを落としていた。







☆*。


―――可愛い可愛いプリンセス。





カゴの中から出された鳥は、この後一体どうなったんだろう。

自由に空をはばたけるようになったのかな。

まだ見ぬ広い世界をその目に焼き付けに行ったのかな。







…………それとも





また別の籠の中で、外に出されることなく大切に大切に育てられていくのかな。






それを知るのは、プリンセスただ1人だけなのだけどね。

夢の世界はすぐそこに【shp】→←外の世界へ【zm】



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マーシャ(プロフ) - めるさん» 基本的にここにあげてるお話はツイッターで上げていたお話なので更新速度かとてつもない速さになってます笑。内容はフォロワーさんなどにリクエストとかいただいて書いてます! (2019年9月20日 20時) (レス) id: cf5983d7fe (このIDを非表示/違反報告)
める(プロフ) - 更新スピードの速さにびっくりしています…!お話のネタってどうやって考えているのですか? (2019年9月20日 17時) (レス) id: 00dabe47f6 (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - 名無しさん» ひょえ、ありがとうございます…!微妙なところで終わったので、気が向いたら続き書こうかな、と思ってます。 (2019年9月18日 23時) (レス) id: 942f8fba2e (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 猫の日の話がとても好きです (2019年9月18日 21時) (レス) id: 8e5d693f3e (このIDを非表示/違反報告)
ねおる(プロフ) - マーシャさん» そうなんですね・・・ (2019年9月17日 20時) (レス) id: 0c3e920e49 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マーシャ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年9月2日 14時

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