＊ ページ29
☆*。
『はぁ、はぁ、…っ！』
静かな夜の住宅街。
私は暗闇の中全速力で走っていた。
彼らが外出しているうちに家を抜け出し、少し離れた警察を目指して賢明に走る。
最近大人しく言うことを聞いていたおかげで、首輪や手錠をつけられずに、すんなり外に出ることが出来た。
あとは、このまま見つからずに警察に駆け込むだけ。
元々あまり運動が得意ではない私は、既に息が上がってきている。
苦しくなる呼吸を整えながら、私は必死に足を進めた。
ちらりとスマホを見やると、画面に表示されるのは何件もの着信履歴。
それは全て彼らからのもので、また少し背筋が凍った。
怖い。
怖い。
もう彼らと一緒にいることなんてできない。
このままだと私は壊れてしまう。
最後の希望を光を見すえて、私は小さく息をついた。
『…はぁ、はぁ、はぁ、……けほっ』
さすがに走り続けることが苦しくなり、足を止める。
膝に手をやって荒い息を整えて、私は僅かに思考を巡らせた。
これは、もしかしたら逃げ切れるんじゃないか？
ふらふらとまた歩き始める。
もう交番は目と鼻の先だった。
………後、少し。
☆*。
「みーつけた。駄目やん、勝手に外出たら。」
『………っ！？』
冷たい声色。
優しく首筋を撫でる指先。
腰に回された細い腕。
長年聞き続けてきたその声に、私はひゅっ吐息を飲む。
花につくタバコの匂いに、私は軽く絶望した。
………あぁ、駄目だった。
逃げきれなかった。
「勝手に逃げるなんてええ度胸やな。…今回はもう許さへん。一生出られんようにしたるわ。」
目の前に立ち塞がるのはがっしりとした体つきの彼。
ハイライトの無い瞳で、静かに私のことを見下ろした。
『……あ、だいせんせ………コネさ………ご、ごめんなさ…』
「行くで」
私の想いは届かない。
もう外の景色を見れるのはこれで最後かもしれない。
瞳いっぱいに涙を貯めて彼らを見つめても、彼らは満足気に私の腕を引くだけ。
お願い。
誰か助けて。
ここから救いあげて。
無機質な音を立てて閉じる扉。
遮断される外界からの音。
擦れる金属音だけが、私の新たな世界を彩った。
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マーシャ(プロフ) - めるさん» 基本的にここにあげてるお話はツイッターで上げていたお話なので更新速度かとてつもない速さになってます笑。内容はフォロワーさんなどにリクエストとかいただいて書いてます！ (2019年9月20日 20時) (
レス) id: cf5983d7fe (このIDを非表示/違反報告)
める(プロフ) - 更新スピードの速さにびっくりしています…！お話のネタってどうやって考えているのですか？ (2019年9月20日 17時) (レス) id: 00dabe47f6 (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - 名無しさん» ひょえ、ありがとうございます…！微妙なところで終わったので、気が向いたら続き書こうかな、と思ってます。 (2019年9月18日 23時) (レス) id: 942f8fba2e (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 猫の日の話がとても好きです (2019年9月18日 21時) (レス) id: 8e5d693f3e (このIDを非表示/違反報告)
ねおる(プロフ) - マーシャさん» そうなんですね・・・ (2019年9月17日 20時) (レス) id: 0c3e920e49 (このIDを非表示/違反報告)
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