愛の対価【ut】 ページ21
『ねぇ、あなたは私を愛してる？』
不意に彼にそう尋ねれば、彼は不思議そうに首を傾げた。
そんなのお構い無しにじっと彼を見つめ続ければ、だんだん優しく変化していく彼の顔。
手馴れた様子で軽く私にキスを落とすと、甘い声で囁いた。
「もちろんやで。世界でいちばん愛しとる。」
それを聞いてくしゃりと崩れる私の顔。
…そうよね。当たり前よね。
鬱は私の彼氏だもの。
私を愛しているに決まっているわよね。
『…ううん。ならいいの。私も愛してるよ、鬱。…だから、絶対浮気なんてしないでね。』
約束だよ。そう言って私が彼に小指を差し出せば、少し困ったように彼は眉を寄せる。
彼は笑顔で頷いてくれたけれど、小指を絡めてくれることは無かった。
☆*。
「…っあ、ご、め、…っ、ゆる、して…」
私の下から苦しそうな声が漏れる。
静かに下を見下ろせば、そこには苦しそうにもがく鬱の姿があった。
目を涙をうかべ、必死に私の手首を振りほどこうと握っている。
懇願するように揺れる瞳に、私は1人口角を上げた。
…あぁ、やっと、私だけを見てくれたね。
『ねぇ、なんで？約束したじゃない。絶対に浮気はしないって。なんで？どうして浮気したの？私はあんなに愛してあげたのに。』
「ひゅっ………か、は、A………たす、けて…」
『なんで？どうして？約束破るなんてひどいじゃない』
「…も、もうしな、い、からっ……かひゅ、……おね、が、い…っ」
もがく彼。笑う私。
彼の顔からだんだん血の気が引いていくのが分かる。
苦しそうに口を開ける彼に私はまた笑みを深める。
…愛してくれないのが悪いのよ。
私はあんなに愛してあげたのに。
どうして愛してくれないの？
どうして私以外を愛するの？
『私を愛してくれない人なんて、いらないの』
…だから、ばいばい。
私は、ぐっと彼の首にかけた手の力を強めた。
☆*。
カラン、と氷のぶつかる音がする。
「…鬱が行方不明になってもう一年か…。…お前は気をつけろよ？」
私の隣に座る男は、何かを思い出すように目を細め、じっと私を見つめている。
『分かってるよ。…ねぇ、グルさん』
「…ん？どうかしたのか？」
今私の心にいるのは貴方だけ。
鬱なんて男はもう忘れた。
だからもう一度、私は貴方に問いかけるの。
『あなたは私を愛してる？』
その答えは、はいかYESしか認めない。
精一杯の愛の対価は、精一杯の愛で。
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マーシャ(プロフ) - めるさん» 基本的にここにあげてるお話はツイッターで上げていたお話なので更新速度かとてつもない速さになってます笑。内容はフォロワーさんなどにリクエストとかいただいて書いてます！ (2019年9月20日 20時) (
レス) id: cf5983d7fe (このIDを非表示/違反報告)
める(プロフ) - 更新スピードの速さにびっくりしています…！お話のネタってどうやって考えているのですか？ (2019年9月20日 17時) (レス) id: 00dabe47f6 (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - 名無しさん» ひょえ、ありがとうございます…！微妙なところで終わったので、気が向いたら続き書こうかな、と思ってます。 (2019年9月18日 23時) (レス) id: 942f8fba2e (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 猫の日の話がとても好きです (2019年9月18日 21時) (レス) id: 8e5d693f3e (このIDを非表示/違反報告)
ねおる(プロフ) - マーシャさん» そうなんですね・・・ (2019年9月17日 20時) (レス) id: 0c3e920e49 (このIDを非表示/違反報告)
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