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「ねぇっ！だいじょうぶ？！」
酷く肩を揺すられて意識を引き戻した。勝手に、涙が溢れていた。
「ごめんっ！打ち所悪かったかな」
打ち所が悪い人間を揺するな。そう思いつつ、
「大丈夫。問題ない」
そう答えておいた。嫌な記憶を思い起こさせる原因になったと言ったってしょうがないだろう。
「ホント、ごめんね！」
言うなり、少女は薄く緑に光る手で俺の額に触れた。
「何、」
と、光に触れた部分がじんわりと暖かくなり、速かった鼓動が段々と落ち着いていく。少女の手が離れた頃には、ぶつけた部分も、痛んだ頭も、すっかり痛く無くなっていた。
「えーっと、落ち着いた……かなぁ？」
頬をかいて、少女は俺の様子を伺うように小首を傾げた。その時、少女の耳が長く尖っていることに気が付く。そういえば、ここは異世界だった。それに、そういえば目を覚ましたよくわからない神聖な雰囲気の場所にも、『１つだけ魔法が使えるはず』とか書いてあったような。
つまり、先ほど少女の手が薄く緑に光っていたのも、その光を浴びて身体が落ち着いたのも、『魔法』のおかげという事だ。
「ありがとう」
少女は悪意があってぶつかった訳では無いし、そうお礼を伝えれば、
「えへへ、よかったぁ」
と、少女は柔らかく微笑んだ。
×
「あたしね、ハナキ・チカっていうの」
エルフ耳の少女は俺の方を見る。少女の動きと共に薄茶色の柔らかなボブヘアーがふわふわ揺れた。『ハナキ・チカ』……まるで日本人のような名前の響きだ。と、「あ、」そう目の前の少女は小さく声を上げ
「ごめん、こっちは名前が先だったんだ！」
「だから、チカ・ハナキだね」そう、気恥ずかしげに少女は訂正した。『こっちは』という事は、この少女も元は日本に居たのかもしれない。
「それで、あなたのお名前は？」
緑色の大きな丸い目が、俺の顔をじっと見つめる。こっちは日本と違って名前が先で、苗字を後に付けるのならば、
「俺は…七彩、光…『ヒカル・ナナセ』だ」
そう、名乗った。この異世界は外国、みたいなものだろうか。でも、日本っぽさは今のところ一つも感じなかったので、恐らく外国の風味が強い世界なのだろうと予想する。
「ナナセ？そっか！」
少女は俺の名前を聞くと弾けんばかりの眩しい笑顔を俺に向けた。
「よろしくね、ナナセ！」
ーーこうして、唐突に始まった俺の異世界生活が幕を上げる。
だけど、この世界は、クソッタレだったんだ。
どうしようもないほどに。
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鬼灯(プロフ) - 先に言っておきます、主人公にムカつくのならば、私の考えた設定に見事ハマっております。この主人公、(あるいは数名の登場人物)には、少しイラつくような、不愉快になりそうな要素をいくつか混ぜ込んでおります。主人公の察しが鈍いのもそのせい。(もはや言い訳) (2020年11月28日 12時) (
レス) id: 0ae018eaaf (このIDを非表示/違反報告)
鬼灯(プロフ) - 蟻さん» コメントありがとうございます！頑張って完成させたいと思います。 (2020年9月27日 0時) (レス) id: 0ae018eaaf (このIDを非表示/違反報告)
蟻 - 続きが気になります！ 時間がある時で大丈夫ですので無理のない更新頑張ってください (2020年9月26日 17時) (レス) id: 25e4f6e788 (このIDを非表示/違反報告)
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